一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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砂糖水につけたねぎの観察

質問者:   小学生   かすみ
登録番号2027   登録日:2009-07-25
自由研究で、ねぎの根を水、砂糖水につけて成長を観察しました。
砂糖水につけたねぎの根が、赤くなっていました。
不思議に思い、どのような時に、根が赤くなるかを調べました。

砂糖水の濃度は、5%の時が一番早く赤くなりました。
気温は高いほど、早く赤くなりました。
また、ねぎの種類を変えても、全てのねぎの根が赤くなりました。

なぜ、砂糖水では根が赤くなるのか、教えてください。

また、参考になる本を教えてください。
かすみーさん

質問コーナーへようこそ。歓迎致します。面白い実験をしていますね。
どうしてこういう実験をやろうと思ったのかな。
でもいろいろ考えて、条件を変えたりしているのは探究心があって素晴らしいです。
ところで、質問への回答ですが、いますぐできません。というのは質問の内容だけでは分からない事があるからです。以下の事を教えて下さい。
1)ネギの根をどのようにして砂糖水につけて育ているのか。
2)赤い色は“まっ赤”、”ピンク”、など、もっと色の程度が分かるといいです。
3)赤く染まるのは全体かそれとも部分なのか。
4)砂糖水につけて何日くらいで色がつき始めたか。
5)砂糖水は毎日取り替えているのか。
6)光はあたっているのか。
7)赤くなった根は健康そうであるか。水で育てたものにくらべて、色以外に違いはあるのか。

私はこういう観察を他の植物でもした事がないので、実際に見てみないと何とも言えないのです。いま、自分でもネギの根を5%の砂糖水のなかで育て始めました。同じ事が観察できれば良いと思いますが。
回答は上の質問への答えをみて、また、私の観察が終わってから送りますので、しばらく待って下さい。



回答者からの質問への返答:

去年の夏休みの自由研究で、いろいろな野菜の切れはしを使った水さいばいをしました。ねぎは、育てやすかったので、いろいろな条件を変えて、水さいばいしました。
人間は、砂糖をたくさん食べると太るので、野菜も大きくなるかと思って、砂糖水でさいばいをしました。すると、根が赤くなりました。去年は、ここまでしかできませんでした。今年は、この根が赤くなることについて、調べてみようと思いました。

質問の答えですが、

1)ネギの根をどのようにして砂糖水につけて育ているのか。

ネギの葉の部分を根元から4cm計って切ります。カップに、切ったネギを入れます。そして、ネギの根元がつかるくらいの砂糖水を入れます。

2)赤い色は“まっ赤”、”ピンク”、など、もっと色の程度が分かるといいです。

始めは、うすいピンクです。少したつと赤紫色に変化します。このように、日がたつにつれて根の色がこくなります。

3)赤く染まるのは全体かそれとも部分なのか。

始めは、根先か、根元が赤くなります。その後、全体が赤くなってきます。

4)砂糖水につけて何日くらいで色がつき始めたか。

気温が28℃で、小ネギの場合、4日目で、赤くなり始めました。

5)砂糖水は毎日取り替えているのか。

毎日、朝かえています。でも、暑い日は夜も取り替えています。

6)光はあたっているのか。

直接、日光があたらない、明るい場所でやっています。箱の中に入れた実験もしましたが、日なたほど赤くはなりませんでした。冷蔵庫に入れたときは、全然赤くなりませんでした。

7)赤くなった根は健康そうであるか。水で育てたものにくらべて、色以外に違いはあるのか。

水よりは、元気ではありませんが、くさってはいません。水は、根がのびましたが、砂糖水はあまり変わりませんでした。小ねぎの根が赤くなった様子の写真を送ります。赤くなった根をうすく切って、顕微鏡で見ました。赤い点々のようなものが見えました。

また、赤くなった根を、今度は水でさいばいしてみました。すると、赤色はうすくなったのですが、根が弱ってきて、最後はくさってしまいました。


かすみーさん

早速質問に答えていただいてありがとう。いろいろ考えて実験しているのですね。一つの観察から新しい疑問がわき、次にそれを解いてみようという態度はりっぱな自然科学のやり方です。素晴らしい事です。
さて、まず疑問に答えましょう。
送って下さった写真と質問への返答とから判断して、その赤い色素はおそらくアントシアニンという植物にとってふつうの色素だとおもいます。アントシアニンは花や果実や茎の色などのもとになっているも主なもので、条件によって赤〜青と色合いがちがいます。アントシアニンについては質問コーナーに関連する回答が65も掲載されていますからぜひ見てください。質問コーナーでアントシアニンと用語検索して下さい。
写真では根だけでなく葉の一部にも同じような赤い色がみられますね。アントシアニンはふつうは根には見られませんが、根でアントシアニンがつくられる例は沢山報告されています。ネギでなくてもつくられます。また、ネギではありませんが、サトウキビを用いた実験では、砂糖(砂糖はショ糖とかスクロースといいます)や他の糖類で根のアントシアニンの合成が増えるという報告がありますので、ネギでも砂糖があるとアントシアニンがつくられやすいのでしょう。顕微鏡でみて赤い点のようなものが見えたのは、根の細胞、たぶん表皮(一番外側の組織)の細胞かと思います。アントシアニンは植物の細胞では、液胞(エキホウ)という液体がたまった袋のなかに蓄積されます。植物の細胞では内部の大部分がこの液胞で占められています。もし、赤い部分がまるまって見えているのでしたら(多分そうだと思いますが)、細胞が原形質分離(ゲンケイシツブンリ)というのをおこしているからでしょう。原形質分離については質問コーナー回答登録番号0695を読んで下さい。もし、倍率の高い顕微鏡で観察できればはっきり分かると思います。
アントシアニンの合成は細胞の中の化学反応ですから、温度が低いと反応が進みません。だから冷蔵庫では赤くならないでしょう。また、アントシアニンの合成は光があるといいので、暗い所でも赤くはなりにくいと思います。
最後に、赤くなった根をふつうの水に移したら死んでしまったというのは、はっきり分かりませんが、5%という濃い砂糖水の中では根の細胞は原形質分離を起こしているからでしょう。そういう細胞はそのまま時間が経つと死んでしまいます。

私の質問に的確に返答ができるのは、実験をしっかりやっている証拠です。素晴らしい。小学生で顕微鏡観察ができるなんてうらやましいですね。
今後も、植物のいろいろな現象に興味をもって、自分なりの観察や実験をつづけて下さい。

勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2009-08-04
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