一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ソメイヨシノの花の(花糸の)色変化は昆虫が蜜を吸った影響か

質問者:   一般   ハリーちゃん
登録番号2836   登録日:2013-04-10
 ある植物の本に書かれていましたが、ソメイヨシノの花糸の色が白からピンクに変わるのは「昆虫に蜜を吸われると花糸の色を変え、昆虫にこの花には蜜がないのを教える」とありました。しかし実際に沢山の花を調べたところ、花糸が白い花でもピンクの花でも蜜の量に全く変化はなく、昆虫が蜜を吸ったから変化したとの解説は誤りではないかと思います。高い枝につく日の当たる場所の花と、影になった枝につく日の当たらない場所の花では、日の当たる場所の花の方がはるかに沢山の花はピンクに変化し、日の当たらない枝に付く花の変化は少ないことが判りました。これから花糸の色の変化は昆虫の影響でなく、日射による影響と考えられます。本当の理由を教えて下さい。
またオオシマザクラのような白い花弁の花糸にはそのような変化が見られず、ヒガンザクラやカワズザクラははじめからピンクのようですし、さらにコアジサイの花糸は白から水色に変化するのでアントシアンの影響と考えます。花糸に含まれる糖類が日射でアントシアンの色素に変化すると考えてよいのでしょうか。また同じサクラの仲間でも花糸に糖類やアントシアンのあるものとないものとがあるのでしょうか。
ハリーちゃん様

みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。頂いたご質問の回答を
花の発色機構の研究をしておられる名古屋大学の吉田久美先生にお願いいたしましたところ、以下の様な回答をお寄せ下さいました。ご参考になるものと思います。


吉田先生のご回答
「花糸」とはおしべの花粉がある葯の柄の部分です。
無色のものもありますが、ここの部分が着色している花がいくつかあります。
いずれもアントシアニンによる場合が多いかと思います。
アントシアニンの生合成は、フェニルアラニンというアミノ酸をスタートとして
途中までは他のフラボノイド類(ケルセチンやカテキン類など)と同じ経路をたどります。
その最初の酵素反応であるフェニルアラニンからアミノ基を除去する酵素(フェニルアラニンアンモニアリアーゼ)は一般に紫外光があたることによって誘導される例が多く、葉の陰になった部分のリンゴや、ナスのヘタの下が色がつかない原因となっています。
したがって同じような仕組みが花糸の着色に関係していることは十分考えられます。
(ただし、実際に花糸においての科学的な研究による証明があるかどうかは、申し訳ありませんが、現時点で私は知りません)
一方で、糖類がアントシアニンの色の濃さに影響を与えることはいくつかの花卉の研究で報告があります。糖濃度が高いとアントシアニン量が増加する結果が得られています。

生殖との関係ですが、サクラではありませんがランタナという花も色が変化します。それについては、下記で解答させていただいておりますので、参考になさってください。
質問:ランタナの花の色変化について(登録番号2692

吉田 久美(名古屋大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2013-05-02
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