一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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挿し木の寿命

質問者:   その他   近藤
登録番号0055   登録日:2004-05-05
園芸が趣味の父から、「実生はいいが、挿し木した木は親の木の寿命しか保たない。」と聞きました。子供の頃、他の人からも同じ事を聞いたことがあります。
この俗説は本当ですか?

本当だとしたら何故でしょう?挿し木ができるのなら、全能性が保たれていると思うのですが。
近藤さま

 植物全能性や不定根形成の研究をされている杉山宗隆先生(東京大学)から回答をいただきました。

 そもそも植物の寿命をどう考えるか、という問題もありますし、私には厳密な解答をすることはできません。ただ大雑把には、「挿し木の寿命が親の寿命しかもたない」というのは多分俗説であって、真実ではないと思います。と言いますのも、専ら挿し木で増やされていると思われる品種が、園芸植物や有用樹木には結構多いですから。例えば、 Abutilon x hybridum というアオイ科イチビ属の園芸植物には、周縁キメラになっているために葉の周辺部が白色を呈する品種がいくつかありますが、それらは挿し木でのみ増殖されているはずです(そうでないとキメラが維持されま せんから)。キメラのために覆輪になっている園芸植物はほかにもいろいろあるようで(ゼラニウムとか)、これらについても同様のことが言えます。こういう種子で殖やすことが不可能な品種が、挿し木繁殖で長く維持されていることは、上記俗説に対する有力な反証となるのではないでしょうか。

 杉山 宗隆(東京大学)
広報委員長 神戸大学
三村 徹郎
回答日:2006-10-20
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