一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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紫外線は植物の成長に悪い影響を与える?

質問者:   中学生   岸逸郎
登録番号0391   登録日:2005-10-07
夏休みの自由研究で紫外線は植物にどのくらい悪いかを調べました。

アクリル板で紫外線を減らして葉大根を育てました。でも、葉大根は、アクリル板を使わないときと同じように育ちました。紫外線は植物が育つのに影響ありませんでした。
もしかしたら、こんな方法だと紫外線の影響なんて調べられないのかなと思いました。
紫外線が植物にどんな影響を与えるのか教えてください。
それから、紫外線の影響を調べる方法を教えてください。
岸 逸郎 君
質問コーナーへの質問(登録番号0391)に回答します。

紫外線(UV,ultraviolet の略称)は波長によってふつうUVA, UVB, UVCのグループに分けられます。UVAは320〜390nmの波長域(nmは1mの10億分の1)、UVBは280〜320nm,UVCは200〜280nmの波長域です。波長の短い紫外線ほど生物にとって有害です。大陽からくる紫外線のうちUVCとUVBは酸素とオゾンによって吸収されてしまいますので、地球上に届くのはわずかです。しかし、いま、オゾン層の破壊が問題になっているのはご存じでしょう。
紫外線の主な有害作用は遺伝子(DNA)の損傷です。このために、皮膚ガンなどが引き起こされるのです。ところで、植物はヒトよりももっと紫外線に曝されています。高い山では紫外線量は平地より多いので、高山植物は特にそうです。しかし、自然の状態では植物に対する紫外線の直接的影響はほとんど問題にならないと考えられています。植物は葉に紫外線を吸収するフラボノイドとよばれる色素を含んでいますので、この物質が紫外線の影響から植物を守っています。高山植物ではフラボノイド化合物の含量が高かったり、傷害を修復する機構が強く働いているようです。人工的に大量の紫外線を植物にあてると、成長や花芽形成の阻害、葉の肥厚、葉の表面のワックスがみられることもあります。紫外線は植物にとって負の影響ばかりではなく、アントシアニンの合成や光屈性の現象などにも利用されています。
植物に及ぼす紫外線の影響を調べる場合、紫外線をカットしても植物の外見上の形態への影響はまずみられないでしょう。むしろ、紫外線を大量に与えてその影響をみる実験はできます。しかし、人工的な紫外線を扱うのは装置の問題もありますが、危険ですので先生によく相談して下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
 勝見 允行
回答日:2009-07-03
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