一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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斑入り植物について。

質問者:   その他   紺色
登録番号0468   登録日:2006-01-16
子供じみたしつもんですいません。
一枚の斑入りの葉において、斑入りの部分とそれ以外の部分では、組織や成分などがどのように違うのか、教えてください。
紺色 様

斑入りについてのご質問ありがとうございました。植物の斑入りについて、何が原因でどうして生ずるのかなどについて、詳しく研究されておられる岡山大学・資源生物科学研究所・坂本 亘 教授から次のような回答を頂きましたのでご覧下さい。なお、斑入りについては坂本先生が質問コーナーの登録番号0235の回答にも解説されておられますので、参考にして下さい。また、登録番号0397に対する回答にプラスチッドのことが、また、登録番号0100、登録番号0323に対する回答にクロロフィールの分解が述べられていますので併せてご覧下さい。

  
斑入りの葉で、緑のところと白いところで何が違うかというと、細胞の中にある「葉緑体」が違っています。

 ふつう、緑の細胞の中には、光合成を行うための、膜でおおわれた器官が発達します。それが葉緑体です。葉緑体には光合成を行うための、(1)光エネルギーを受け取る装置、(2)光エネルギーを化学エネルギーに変える装置、(3)そのエネルギーで二酸化炭素から糖を合成する装置、があります。緑に見える理由は、上の(1)にクロロフィルなどの色素(葉緑素)があるからです(色素が吸収しない光が緑なので、緑色に見えるのです)。つまり、斑入りの葉には葉緑体がある細胞と、そうでない細胞とがかたまりになっているため、緑と白に見えるのです。白いところには、上の(1)(2)(3)がありません。

 では、白い細胞には何があるかというと、葉緑体のかわりに「白色体(プラスチド)」という器官があります。一般に、プラスチドは葉緑体の前駆体で、プラスチドに光が当たると、上に書いたような装置が発達して葉緑体になります。白い細胞では、葉緑体になることができなかったプラスチドがそのまま残っているか、あるいは、葉緑体が上の装置を維持できずに壊れてしまったプラスチドが残っています。

 葉緑体は、細胞内共生といって、植物の起源となった細胞にシアノバクテリアという光合成細菌が入り込んでしまったことに由来します。したがって、葉緑体は細胞内でバクテリアのように動きまわったり、増殖を続けたりしますが、細胞自体がそれをうまく制御しているのです。斑入りの植物でも、おそらく、このようなプラスチドは増殖していますが、葉緑体への分化、あるいは葉緑体を維持することがうまくいかない部分ができ、その結果、白と緑のところができてしまいます。緑のところは光合成をするので、デンプンが蓄積しますが、白のところでは蓄積しません。中学校の教科書では、デンプンを紫に染めるヨウ素反応でテストすると、緑のところだけ染まることが紹介されています。

 なぜ斑入りになるか、私はその専門家なのですが(>_<)、残念ながら、その理由はよくわかっていません。ただ、原因はある程度わかっています。解明されたものの多くは、突然変異、つまり遺伝子の働きが違うことでそのような斑入りになることがわかっています。また、生理的な理由、つまり、植物が病気にかかったときなどに症状として斑入りが現れることもわかっています。どちらにせよ、自然界にたくさんの斑入り植物が存在するので、植物が様々な環境条件(例えば、熱帯地方とか乾燥地帯など)に適応して繁殖するときに、有利になる場合があるのだと考えられています。

 植物の斑入りは、見るだけでもいろいろあって楽しいですが、科学的にわからないこともたくさんある面白い材料です。なぜ、自然界にいろんな斑のパターンができるのか、興味深いですが、同時にわからないことばかりです。

 坂本 亘(岡山大学資源生物科学研究所)
JSPPサイエンスアドバイザー
 浅田 浩二
回答日:2012-08-25
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