一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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斑入りの葉

質問者:   中学生   みほ
登録番号0749   登録日:2006-06-06
①学校で斑入りの葉について勉強しました。斑入りの葉は自然とできるのですか?
 または鑑賞用に人工的につくられているのですか?
(まるで模様にようにきれいに中央部分だけ白くなっている葉も家の近所でみつけました。)

②光合成には葉緑体が必要ですが、紅葉した葉は光合成していないのですか?

③光合成に必要な水は根から吸収するとならいましが、雨や雪などの水が土の中に残っているという意味でしょうか?
 毎日光合成するほど水はあるのでしょうか?

まだまだ質問したいですが以上お願いします。
みほ さま

ご質問いただいた順にお答えします。

(1)
斑入りの葉がどうしてできるかについては、最近、ご質問を受けたばかりです。詳細については質問コーナーの登録番号0727に対する回答をご覧下さい。なぜ、斑入り植物ができるかは回答を見ていただくとして、園芸植物に多いことから見て、自然に遺伝的な変異によってできた斑入りの変異種が美しいために(ヒトによって)保存され、栽培され、残されてきたためと、思われます。葉が斑入りになるとそこには葉緑体が少ないか、全くなくなってしまい葉の面積当りの光合成量が低くなるため、斑入りの植物自身にとって余り有利な性質ではありません。その証拠に、イネ、ムギを初め葉緑体の光合成量が重要な農作物には斑入りの植物はありません。自然の遺伝的な変異によって例え農作物に斑入りの変異種ができてもそれらは保存されず、捨て去られたために、農作物には斑入り植物が残されてこなかったと考えてよいでしょう。

(2)
晩秋になって温度が徐々に低くなると、葉の外側の細胞にアントシアンのような赤い色素が合成されて蓄積し、美しい紅葉で山を染めるようになります。秋になるまで葉は緑色をしていますが、葉緑体は葉の内側の細胞にあり盛んに光合成をしています。アントシアンが外側の細胞にたまって葉緑体の緑が隠され紅葉の状態になるわけですが、この頃でも内側の細胞の葉緑体は光合成をしています。しかし、なぜ、秋になれば、外側の細胞にアントシアンを溜め込んで葉緑体に光合成に必要な太陽光を届きにくいようにしているのか?このアントシアニンの“日傘効果”がなぜ必要か?なぜ紅葉が必要なのか?これらに対する一つの考えは、質問コーナーの登録番号0388に対する回答をご覧下さい。

(3)
雨や雪の水は川を経て一部は海に流れますが、大部分は土に浸透して地下に残っています。山林の樹木を含め植物は大量の水を根から吸収し(1日当り植物水分含量の~10倍)、一部は光合成に利用され酸素になりますが、残りは蒸散作用によって水(水蒸気)の形で大気中に放出され、これは再び雨となります。植物も他の生物と同じように生きるためには水が絶対に必要であり、代謝、養分吸収、温度調節などのためにも水を欠かすことはできません。そのため、陸地で生えることのできる植物の種類は平均気温と共に、年間の降水量によって大きく異なります。砂漠のように年間降水量の少ない地域ではサボテンのような水の要求量の少ない植物しか生存できず、雨の多い地域では熱帯降雨林(密林)のように多種類の植物が高密度で生えることができます。
              
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2012-08-25
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