一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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たんぽぽの茎

質問者:   その他   はせべぎんじ
登録番号0763   登録日:2006-06-10
国語の教科書にみがじゅくすまで 、くきはひくく、たおれていますと書いてありましたが、どうしてたおれるのですか。
かんさつしてみたら、1日くらいしかたおれていなみたいです。みがじゅくすよりまえにたちあがります。
はせべぎんじ さん:

私たちの身近な場所に生えているタンポポ(※1)について、ひとつの花(※2)に注目して観察してみると、花が咲き始めてからタネが飛んでいくまでにだいたい2週間くらいかかるようです。もう少し詳しく見てみると、花が咲き終わった茎(※3)は、数日後には横にたおれ、そのたおれた状態で数日を過ごします。その後、茎は伸びながら立ち上がってきます。茎が立ち上がってすぐですと、タネはまだ緑色ですが、その後2,3日でタネは熟します。

なお、ご質問の中には、「横になっている状態が1日であった」とあります。気象条件などによっては、開花してからタネができるまでのスケジュールが変動しますので、上で述べたようなスケジュールはおおよその目安として考えてください。

さて、「花が咲き終わると、なぜ茎がたおれるのか?」というご質問ですが、ずっと茎が立っていると、タネが熟す前に茎が折れたり、切れたりしてしまう危険性が高くなり、その結果として健全なタネができなくなるからではないか、と予想されます。
なぜなら、身近にみられるタンポポは、空き地や畑の周辺などの明るくてよく目立つ所に生えていますので、踏みつけられたり、刈り取られたりする機会が多くなります。そのような時に、中空であまり頑丈ではないタンポポの茎は、折れやすいことが想像できます。つまり、タネが熟すまでの間に、茎が立ち上がった状態でいるよりも、一度横にたおれている方が、たくさんの健康なタネができるのではないか、と思います。

また、よく観察してみると、タネを飛ばすために立ち上がる茎は、だんだんと堅くて強くなっていくことが分かります。その結果、より高いところからタネを飛ばせるようになると思われます。

※1 日本には約15種類の日本産タンポポがあり、その他にセイヨウタンポポなどの外来種、そして日本産タンポポとセイヨウタンポポの雑種タンポポがあります。地域によって差はありますが、身近なところに生えているタンポポの多くは雑種タンポポであると考えられます。この回答では、身近なタンポポとして、雑種タンポポとセイヨウタンポポを想定しています。

※2 タンポポは、ひとつの茎にひとつの「花」が咲きます。この「花」は、正確には頭花(とうか)、または頭状花(とうじょうか)と呼ばれていて、いくつもの小花(しょうか)が集合してできています。この回答の中では、頭花のことを「花」と記述しています。

※3 タンポポの茎のように見えるところは、正確には花茎といわれますが、混乱を避けるために、本文中では「茎」としました。葉や花芽をつけない「花茎」であるがゆえに、タネが熟すまでに横に倒れることができる、と考えられます。
農業環境技術研究所 景観生態
保谷 彰彦
回答日:2006-07-04
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