一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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おじぎ草の仕組み

質問者:   その他   さが
登録番号0821   登録日:2006-06-27
おじぎ草の旗ふれると閉じますが、しばらくすると元に戻りますよね。

温度変化や、水分などの影響で葉が閉じたり開いたりすると聞きますが、本当にそうなんでしょうか?
また、葉が閉じたり開いたりする仕組みは、機構と同じで膨圧の変化によってそうなると私は考えていましたが、どのようにして開閉するのかを教えてください。
さが さん

 ご質問には、オジギソウの葉の開閉の仕組みについて研究されている上智大学理工学部化学科の神澤信行先生にお答えいただきました。ご参考にして下さい。


[神澤信行先生からの回答]

 ご質問にあるとおり、オジギソウの葉に触れるとあっという間に葉が閉じ、葉の付け根(葉枕と言います)から葉が下垂しまうのはご存じの通りです。オジギソウのこの素早い運動は、「触る」という機械的な刺激だけでなく、温度変化や水分変化によっても引き起こすことが古くから知られています。簡単な方法では、火の付いた線香の先端を葉に触れない程度に近づけることで運動が開始させることができます。注意深くオジキソウを観察していると、刺激した葉が閉じたあと、暫くしてから別の葉が閉じ、下垂することに気づくと思います。これは、刺激を伝搬する機構に、動物の神経と同じように活動電位として伝える急速なものと、液性因子が関与するゆっくりしたものとがあるためです。後者に関しては東北大学の上田先生が精力的に研究をしています(http://www.org1.sakura.ne.jp/)。
 運動の仕組みについては、質問にあったように膨圧の変化が主要因と成ります。葉枕は運動に特化した構造をしていて、下垂する葉と茎の付け根に存在する葉枕(盛り上がった部分)を輪切りにして観察すると、上側の運動細胞の細胞壁は厚く、下側に比べて3倍の厚みがあります。膨圧の減少が起こるのは葉枕下側の細胞のみで、膨圧減少による細胞の変形に柔軟に対応できるように用意されています。
 オジギソウで見られる素早い葉の開閉の仕組みは、孔辺細胞と同じ膨圧の変化が主要因ですが、大きな違いは変化が完結するまでの時間にあります。孔辺細胞の開閉は、主に日周サイクルによって調節されるゆっくりとした運動です。それに比べオジギソウで見られる素早い運動は、数秒で完結します。ですから、現象としての膨圧変化を引き起こす分子レベルでの調節機構は全く別のものだと考えられています。孔辺細胞の開閉には、細胞内側の骨組みの1つであるアクチン細胞骨格というのが関与する事が知られていますが、オジギソウの葉枕でもこのアクチン細胞骨格の動的な変化が重要であるとわかっています。違いは、素早い運動に対応した素早いアクチン細胞骨格再編の調節にあると考えられていますが、その詳細は今後の解析待ちとなっています。
 オジギソウの運動に関について良くまとめられた著書がありますので、そちらも参考にしてください。また、私たちの書いた日本語の総説もありますので、必要であればお送りいたします。

(参考文献)
柴岡孝雄 著 「動く植物」 東京大学出版 (1981)
山村庄亮/長谷川宏司 著 「動く植物」 大学教育出版 (2002)
神澤信行/土屋隆英 「植物に見られる運動」 バイオサイエンスとインダストリー vol. 60 365-370 (2002)

神澤 信行(上智大学理工学部化学科)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2006-06-30
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