一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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液胞中の物質はすべて液体?

質問者:   大学院生   rocktail
登録番号1028   登録日:2006-09-04
私は海藻、特に褐藻の貯蔵多糖であるラミナランの研究をしています。以前、専門書でラミナランは細胞の液胞中に溶けて存在しているとの記述を読みました。
ふと、他の物質はどうなのだろうと気になり質問しました。もちろん調べてみましたが、低分子糖や有機酸など明らかに溶けた状態で存在すていそうな物質についての論文、報告はたくさん見つかり疑問は晴れたのですが、結局ラミナランについてはこれといった文献は見つからず、以前目にした専門書もどれだか忘れてしまいました。
質問内容は、ラミナラン等の液胞内の物質はすべてリキッド状ですか。です。
液状の物質が集まっているから「液胞」と呼ばれているのでは、と考えているのですが。
rocktail様

 みんなの広場へのご質問ありがとうございました。頂いたご質問の回答を、液胞について長年研究を続けてこられた基礎生物学研究所の西村幹夫先生にお願いしました所、以下のような回答をお寄せくださいました。液胞の中身は液体とは限らないということですが、私も昔、電子顕微鏡で、まだ消化しきれていないゴルジなどを液胞の中で見たことがあります。

液胞の中は液体?

 液胞の中は細胞液(cell sap)とよばれ、すべて液体と思われていました。しかし種子のタンパク質顆粒は液胞の1種(貯蔵型液胞)と称されており、種子貯蔵タンパク質を多量に蓄積しています。ですからその内部は貯蔵タンパク質が主です。また、花の色素の中にも不溶性のものもありますので、液胞の中がすべて液体とは限らないということになります。
 関連して液胞は英語ではvacuoleと直訳は空胞ですが、液胞とよばれているのは液胞の中が空ではなく細胞液がつまっていることから、細胞液がつまった胞で液胞とよばれるようになったと思われます。小倉謙著「植物解剖及び形態学」1949年刊では、液胞は空胞及び液腔となっています。これがむすびついて液胞という訳名になったとも考えられます。

西村 幹夫(基礎生物学研究所)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2006-09-19
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