一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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原形質流動について

質問者:   高校生   えみ
登録番号1063   登録日:2006-10-01
オオカナダモで原形質流動の実験をしての質問です。
1、原形質流動をオオカナダモの葉緑体で確認したのはなぜでしょうか??
2、原形質流動はどんな環境条件でみられるのでしょうか??
えみさま

 みんなの広場へのご質問ありがとうございました。担当の柴岡と申します。ご質問(1)の回答を、私が高校生だった頃の話で代えさせて頂きます。私が高校生だった頃、高校では年に一度文化祭なる物があり、その際、展示会なるものを開いて各クラブがクラブ活動の成果を発表していました。私は生物部に所属していましたが、が高校2年の年、生物部は原形質流動についての展示をすることになりました。展示会を見に来て下さった方、ひとりひとりに顕微鏡を覗いて頂くのでは、時間がかかり過ぎると、顕微鏡投影装置を自作することにしました。顕微鏡の覗くところにプリズムを置き、顕微鏡を暗箱で覆い、暗箱の前面に置いたスリガラスに細胞を写し出し、原形質流動を見て貰おうということです。これですと、一度に5、6人の方に見て貰うことができます。投影装置は何とかできました。次は植物材料の選定です。原形質流動の観察には、オオカナダモの葉の細胞以外に、ムラサキツユクサの雄しべの毛の細胞とか、タマネギの表皮細胞が使われます。ムラサキツユクサの雄しべの毛は細胞が一つながりになっているし、タマネギの表皮は細胞1層として剥がすことができるので、顕微鏡観察が容易ですし、オオカナダモの葉は細胞層がすくないので、葉そのままで細胞の観察ができます。オオカナダモの葉が原形質流動の観察に良く使われる第一の理由は、顕微鏡観察がし易いということです。さて、原形質流動とは原形質が流動することですが、原形質の大部分は無色透明なので、流動は原形質の中に含まれている粒状のものの動きとしてしか観察できません。ムラサキツユクサの雄しべの毛の細胞でも、タマネギの表皮細胞でも、原形質の中に含まれている粒状のもの(細胞小器官と呼びます)は無色です。無色の粒状物の動きは、顕微鏡を直接覗く方法で注意深く観察すれば、確認することはできますが、私達の作った、投影装置では確認困難でした。その点、オオカナダモの場合、色のついた、比較的大きな細胞小器官である葉緑体が動くので、投影装置でもしっかり見ることが出来ました。オオカナダモが原形質流動の観察に良く使われるもう一つの理由は、流動が容易に確認できることです。細胞の中には、シャジクモの細胞のように、盛んに原形質流動を行っており、葉緑体を持っているのに、葉緑体は細胞を取り囲んでいる細胞膜にしっかりとくっついていて、動かない細胞もあります。こういう材料も投影装置向きではありません。以上述べましたように、オオカナダモが原形質流動の観察に良く使われる理由は、細胞が観察し易いことと、流動が確認しやすいことです。(2)に移ります。細胞によってまちまちです。ムラサキツユクサの雄しべの毛の細胞やシャジクモの細胞では昼も夜も絶えず流動を行っていますが、オオカナダモの葉の細胞では、光が当たったことなどで流動が開始します。
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2006-10-03
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