一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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多年生イネ科植物の越冬

質問者:   大学院生   zoe
登録番号1138   登録日:2006-12-26
初めまして、
植物による水質浄化の研究を行おうとしている
修士課程の学生です。

多年生イネ科植物の
越冬時に地下茎に全養分を貯える
という性質に注目しました。
しかし、その仕組み・機構について
記された論文を探しているのですが
未だ見つけることができません。

多年生イネ科植物の、
越冬時に体内の養分を地下茎に移動して貯える機構について
お教え頂けますでしょうか。
宜しくお願い致します。
zoeさま

 多年生イネ科植物が冬の間に全養分を地下茎に貯え、その機構についてのご質問ですが、どのような種なのか(タケ、ササ?)、水質浄化ではどのような成分の除去を目指しておられるのかなどが、わかりません。しかし、一般的な冬を越す多年生の木本科の植物についての考えが、そのままこの場合にも当てはまると思います。基本的に、冬になって気温が低下すると葉は光合成できなくなります。落葉樹は葉を落とし、常緑樹では葉は残りますがあまり光合成はできません。こうして多年生の植物も冬は“冬眠”的な状態で過ごすことになりますが、しかし、春になって気温が上昇したとき、光合成ができる葉を直ちにつくれるように(有機、無機)養分を、(冬になるまでに)木本科の植物では柔細胞に貯えています(本質問コーナー、質問登録番号0690の回答参照)。タケのような種では冬になるまでに地下茎に貯えられた養分が春に筍の速い成長を支えています。
 春になってからの新しい光合成組織を作り上げるための多種類の有機、無機養分をどのような機構で地下茎に合成して貯えているかは、植物生化学の広い分野にわたる問題であり簡単にはお答えできません。さらに、水質浄化の目的で除去したい成分によってもその機構は大変異なると思います。最近の植物による環境浄化については次の総説をご覧下さい。E. Pilon-Smits (2005) Phytoremediation. Annu. Rev. Plant Biol. 56: 15-39.
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2006-12-26
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