一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ユリの開花

質問者:   教員   mi
登録番号1140   登録日:2006-12-23
以前に「ユリの開花のメカニズムについて」の質問をしたものです。回答ありがとうございました。今回,3つ質問をさせてください。
・教えて頂いたようにレプリカ法で開花前後を調べてみました。顕微鏡の接眼レンズにデジカメのレンズをあてて,写真に撮ったもので調べてみました。つぼみの時よりも開いたときの方が細胞が大きくなっていることや,内側よりも外側の細胞の方が大きいようであることが観察されました。ただ,数が増えたかどうかについては,視野の中の細胞がつぼみの時よりも大きくなっているため,視野中に見える細胞数が減ってしまい,数の増加については分かりませんでした。技能の未熟さに加え,日々の予備実験や生徒指導の合間を縫って行っていることでもあり,結果が曖昧ですが,ユリは,外側の細胞が内側の細胞よりも大きく成長することで開花すると結論づけてよろしいのでしょうか。
・レプリカ法を使うと,花びらがだめになるので,観察に使った花被は,つぼみと開花で別のものになります。同じ茎につく花被の細胞数はほぼ同じと考えよいのでしょうか。
・花被につける印は,墨でということでしたが,なぜマジックではだめなのでしょうか。
本来質問は一つに絞るべきなのでしょうが,以上3点教えて頂きたく存じます。よろしくお願い申し上げます。
mi様

 前回の質問(登録番号1046)に続くご質問有難うございました。顕微鏡観察を行い、花被の細胞が開花前より開花後の方で大きくなっていることに気付かれておられますが、まず、成果があったように思います。しかし、花被の内側の細胞より外側の細胞が大きいという観察結果から、外側の細胞が内側の細胞より生長するから開くという結論はおかしいと思います。細胞の生長の大きさは、開花前の細胞の大きさと開花後の細胞の大きさの差ですので、内側、外側共に開花前と開花後で細胞の大きさを測る必要があります。内側、外側でもともと細胞の大きさが違う可能性がありますので、比べる時は何パ-セント伸びたかで比べて下さい。確かにマニキュアを使ってレプリカをとると組織が死んでしまうので、この方法では同じ場所の細胞を開花前後で比べることは出来ません。一つの花の中の違う花被で比べることになると思いますが、この時注意して欲しいのは、外花被どうし、内花被どうしで比べることです。もし、入手が可能でしたら、歯医者さんが型を取る時に使っているデンタル・シリコン・ラバーでレプリカをとる方法がお薦めです。私は理化学実験用品を扱っているお店に頼んで取り寄せて貰っていました。これですと組織が痛まないので、同じ場所の細胞を、開花の前後で比べることが出来ます。シリコン.ラバーでとったレプリカは透明でないので、このレプリカからマニキュアを使って透明なレプリカをとり、観察して下さい。最後にマジックインクがどうして駄目かですが、マジックインクには有機溶媒が使われているので、組織が痛んでしまします。墨か製図に使われているインディア・インクなら組織が痛みません。
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2006-12-26
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