一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ドングリのタンニンについて。

質問者:   教員   さとこ
登録番号1152   登録日:2007-01-11
初めまして。

ドングリのタンニンについてどうしても分からないことがあり、
質問させていただきます。

以前ドングリのタンニンは加水分解性だという回答があったと思うのですが、
それはお茶のタンニンと同じだということでしょうか。
それとも、お茶のタンニンは縮合型で、ドングリのタンニンは加水分解性なのでしょうか。

また、もしもお茶とドングリのタンニンが同じようなものだとしたら、
お茶の「カテキン」と呼ばれるものと同じような健康効果がドングリのタンニンにもあるということでしょうか・・・。


私はまったく化学の知識がないうえ、情報が諸説あって困っています。
もしよろしければ教えていただけますか???
さとこ さん:

日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。ご質問は標記の番号で受け付け、回答をお送りします。
タンニンとは、主にタンパク質やアルカロイドなどと結合して不溶性物質になる植物成分に与えられた言葉で、毛皮製造の過程で「皮革をなめす」ために使用する植物成分といった意味で、化学的にはさまざまの化合物を含んだものです。共通していることはフェノール性物質が含まれていることで、いろいろな型のフェノール性物質がお互いに結合しあったり、糖などと結合したりしていろいろな大きさの化合物となっています。それらの結合の性質の違いで「加水分解性タンニン」と「縮合型タンニン」に二大別されています。加水分解性タンニンと縮合型タンニンの植物における分布は少しばかり違い、前者は離弁花植物に限られ、後者は植物界に広く分布しています。
登録番号0820にも説明があるようにドングリに含まれるタンニンは加水分解性タンニンが主要なタンニンですが、それ以外の縮合型タンニンが全くないかどうかは分かりません。
成分化学の研究では試料中に含まれる主要な成分の化学が主に取り扱われる傾向があり、微量成分に特別に注目すべき特徴がないときには微量成分をさらにきちんと調べるに至らない場合がたくさんあります。一方、チャのタンニンは縮合型タンニンが主たるものです。緑茶にはカテキンの仲間が特徴的で、これらは比較的簡単なフェノール性化合物で加水分解されないため縮合型タンニンの仲間に入れていますが、「緑茶タンニン」にはこの他に加水分解性タンニンも含まれています。
タンニンの特徴である、タンパク質やアルカロイドと結合して不溶性になる性質(収斂作用といいますが)は、タンニンの種類によって大きく違います。皮革のなめしに使うタンニンや渋柿の渋などのタンニンは収斂作用が強く、茶、コーヒー類に含まれるカテキンなどのタンニンは収斂作用が弱いものです(そのため嗜好飲料になります)。カテキンの「健康効果」の詳細は知りませんが、フェノール性物質に見られるような「活性酸素消去作用」が過大に信じられている向きがあります。ドングリのタンニンは、茶のタンニンとはかなり異なる化合物群で、収斂作用が強いためそのままを経口摂取することはできません(シイのドングリは、例外的に収斂作用の強いタンニン含量が少ないものです)。ですから、ドングリと茶のタンニンの生理効果を同列に比較することはできないことになります。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2007-01-18
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