一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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草本類の栄養貯蔵はどこで行われるのでしょうか。

質問者:   一般   中村
登録番号1159   登録日:2012-08-25
草本類の冬越しについて教えてください。
種子や根に栄養を貯蔵して、地上部を枯らして越冬する一年草や落葉多年草についてはだいたい理解できるのですが、越年草などになると、どこにどんな形で栄養を貯蔵して冬越ししているのかわかりません。
登録番号0226、登録番号0690、登録番号1138を拝見すると、草本でも冬に葉をつけているものでは、葉に栄養を貯蔵しているように推測しますが、根や越冬芽にも栄養が行きそうな気もします。
春の七草を調べていたらハハコグサ、ハコベ、ナズナ、タビラコなど越年草が多いことに気がつきました。もし越年草が葉に栄養を蓄積して冬越ししているなら春の七草を食べる習慣もぐっと合理的に思えてくるのですが、どうでしょうか。
中村 さん:

日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。ご質問は標記の番号で受け付け、回答をお送りします。

植物を「生存期間(寿命)」で分けるものとして、一年生、二年生、多年生という分け方があります。毎年、成長を続ける植物を「木本」としていますので、木本植物は全部多年生です。このような区別は草本植物での話で、種子の発芽から成長、開花、結実、枯死を1年以内に終わるものを一年生、1年以上2年以内に終わるものを二年生、その他を多年生としています。秋に発芽して、栄養体が越冬して翌春に成長、開花、結実、枯死するものは厳密には一年生ですが、ときには二年生とされる場合もあります(数え年の数え方)。このような植物を園芸用語では「越年草」としています。また、低温期に地上部(茎葉部)は枯死しても、根、地下茎あるいは球根などが生きていて、春に苗条が成長するものを宿根草あるいは球根植物などと呼んでいます(これらは多年生植物です)。このような違いは、生育に適当でない低温期(冬季)や乾燥期がある地域に生育する草本に見られる現象で、1年中、生育に適した温度、湿度が保証される熱帯地域では多くの草本が多年生となります。しかし、熱帯地域で多年生でも、温帯地域に移植すれば一年生、二年生となったり、逆に、温帯地域で一年生でも熱帯では多年生になったりしますので、遺伝的な形質ではありません。
一年生、多年生に関わらず、植物の栄養体(茎、葉、根)の働きは、種の生存のための開花、結実に必要な栄養(エネルギー)をできるだけたくさん光合成で作り、蓄積し、果実へ送ることにあります。越年草は、秋に発芽し、栄養体(ロゼットが多い)で越冬するものですが、冬の間も光合成を続けて植物体全体に栄養を貯蔵します。一般的に、根の貯蔵物質は炭水化物とタンパク質が主で、脂質は葉、茎に比べると少ない傾向があるとされています。
食物は、もともと動物、植物が貯蔵した栄養をヒトが戴いているものです。ヒトにとっては「合理的」でも、動物、植物にとっては「とんだ災難」であることに違いありません。「七草」の習慣は、少なくとも平安初期には無病息災、長寿を祈念するものとして中国から伝わったものが今日まで継承されてきたもののようで、精神的要素の強い伝承文化だと思います。無理に「合理性」を求めるものではないように思っていますが。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2007-01-30
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