一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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バラ科の自家不和合性について

質問者:   会社員   ヒロスケ
登録番号1175   登録日:2007-01-30
趣味で果樹を育てているのですが、園芸店等で購入する際「一本では実が着かないよ」と言われます。しかしみんなのひろばの質問を見させて頂いて、自家不和合性について少し理解出来ました。
只、少し理解出来ると疑問が色々と出てきたので、教えて頂ければと思い質問します。

1、自家不和合性は原種から引き継いだ性質だけなのですか?
  それとも、交配の過程で両親が持っていなくても突然現れたりするのですか?

2、知り合いの農家さんから「3種類植えないとそれぞれならない」と言われた事があります。  
  受粉させるのにも好き嫌いってあるのですか?

3、上記と同じ農家さんから聞いたのですが「全く違う種類の花粉でも、実が膨らむ」と言って
  いたのですが本当ですか?種子が出来なくても実は膨らむと聞いたことはあるのですが。

以上3点なのですが、宜しくお願い致します。
ヒロスケ さん:

日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。植物の自家不和合性については0513で概略が、0833で、かなり詳しく、しかも専門的な要素を加えて解説されていますので、ご質問に直接お答えすることにします。
まず、タイトルに「バラ科の自家不和合性について」とありますので、趣味に育てておられる果樹はリンゴ、ナシ、ウメなどの仲間だと思います。これらは、0833で解説されているS-RNaseを雌しべ側認識物質としているグループですので、このタイプの自家不和合性についてのお答えとします。
第一のご質問「自家不和合性は原種から引き継いだ性質だけなのですか?」
雌しべ側、雄しべ側の自己認識物質はそれぞれの遺伝子で決められていますので、花粉の供給親と雌しべ側の親がもつ遺伝的形質です。花粉親と雌しべ親がもつ遺伝子の型の組み合わせで和合か不和合が決まっています。
第二のご質問「3種類植えないとそれぞれならない」は本当か?
人工授粉を行わない場合、実際の果樹園では、花粉供給品種(受粉樹と呼んでいます)を、収穫を目的とする品種の10%から30%くらいを混ぜて植え付けます。このとき、受粉樹にも良質の果実がつくような組み合わせを選びます。最低、二品種の混植で問題ありません。しかし、品種間にも和合、不和合性が複雑な組み合わせとなっています。ナシの品種でみてみると、例えば「幸水」と「新水」は相互に不和合性ですが、「長十郎」はどちらとも親和性があります。ですから、どうしても、「幸水」と「新水」を同じ果樹園で栽培したい場合には、「長十郎」を受粉樹とする、三品種を混植しないと、どれも果実をつけないことになります。しかし、このような組み合わせが一般的に行われてはいるとは思われません。
第三のご質問「全く違う種類の花粉でも、実が膨らむ」?
果樹について調べた研究を見付けることはできませんでしたが、一般に、雌しべの先端(柱頭)に花粉が付着すると、そのことが刺激となって雌しべの基部(子房)が膨れはじめます。特に、ランの仲間でははっきりしていて、柱頭につくのは花粉でなくてもプラスティックの微細な粒子でも同じような子房膨大が見られます。ですから、全く違う種類の花粉でもある程度、実が膨らむことがあり得ることです。しかし、このような子房の膨大は継続しません。特別な場合(例えば単為結果やホルモン処理など)を除けば、果実が発達するためには種子の形成が同時に進行することが必要です。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2007-02-05
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