一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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木の中を登った水は、どうして到達出来たの?

質問者:   一般   重さん
登録番号1457   登録日:2007-11-06
平野でも紅葉が始まり木の気持ちに思いを馳せています。
この頃では、水もあまり吸収しないでしょうが、春先芽吹きには沢山の水を吸収することでしょう。
樹木は、枝葉までどんな原理で水を運ぶんですか。教えて下さい。太い木になると、水の流れる音がすると言いますがそんなに流れるものですか。
重さん:

日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。

ご質問は、古くから常に話題になり、たくさんの研究があるにも関わらず「完全に解明」されていない課題の1つです。このコーナーにもいくつかご質問があり、登録番号0656に詳しく解説してありますので、それをご覧になってください。但し、この解説の記載の最後の行に「アメリカの2つの研究グループが実際に導管内の圧力を測定しマイナス0.5からマイナス3.5気圧になっていることを示して凝集力説は証明されました」という表現がありますが、これについては1)"マイナス0.5からマイナス3.5気圧"とあるのは"マイナス5からマイナス35気圧"の間違いでした。
2)"凝集力説は証明されました"は"凝集力説は証明されたと思われました。しかし、この値は数十メートル以上の樹木の水上昇を説明するためには十分ではないとして、さらに別の力が関係しているとの意見もあります。また、導管内に気泡ができたり消えたりする現象も観察され、水の凝集力説だけで完全に解明された課題とは言えないのが現状です。"と追加してください。
さて、2番目のご質問「太い木に なると、水の流れる音がすると言いますがそんなに流れるものですか」の答えは、「まずあり得ないこと」です。「夏のよく晴れた日に、大木の幹に聴診器を当てると水の流れが聞こえる」ということは私も聞いたことがありますが、導管という細い管の中を時速10センチメートル程度で流れる水の音を聞くことはできないはずです。聴診器を当てれば、梢の枝の揺れ、地面の震動などが伝わって何らかの音が聞こえることはあるでしょう。

最近、日本植物生理学会がこの質問コーナーにこれまで寄せられたご質問をまとめた本を出版いたしました。「これでナットク!植物の謎―植木屋さんも知らないたくましいその生き方」(講談社ブルーバックス)です。水の上昇についての解説も掲載されています。一度ご覧になってください。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2007-11-13
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