一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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デンプン

質問者:   一般   こし
登録番号1575   登録日:2008-04-01
 デンプンの違いに付いて
デンプンはアミロースとアミロペクチンとの集合体が澱粉粒ですが、芋澱粉と葛澱粉などは、何が違って居るのかを教えて下さい。
 
一般 こし
こし さん:

お待たせしました。デンプンの違いに関するご質問は、長らくデンプンの研究をご専門にされている秋田県立大学の中村保典先生にお願いし、次のような回答をいただきました。中村先生の解説にもあるように、デンプンは高分子化合物で、その立体的構造は複雑かつ多様です。違った起源のデンプンの組成、デンプン粒の形や構造などの違いが、それぞれのデンプンの特徴となっているようです。中村先生の解説には写真が添付されていますが、このコーナーではまだ写真掲載ができませんので必要があれば参考文献をお調べください。また、中村先生からは、追加質問があればお答えいただけるとの付言をいただいていますので、日本植物生理学会HPをご利用ください。

【回答】

植物が生産するデンプンは直鎖状のアミロース(重量で約15-35%)と分岐状のアミロペクチン(65-86%)から成っていて、それぞれ特有の分子構造を持っています。特にデンプンの主成分であるアミロペクチンの分子構造は高次元に規則性のある巨大分子で、グルコース(ブドウ糖)のみから成っている分子であることからは想像できない程です。(アミロペクチン分子の内部に存在する高次元にわたる規則性や複雑さを文章だけで説明することは大変困難です。ご希望ならば、理解を深めるための参考文献をお教えします)

さらにデンプンはご指摘のように粒構造を形成しています。従ってデンプンの構造という場合、アミロースやアミロペクチンの分子構造と、デンプン粒の構造(球形、楕円形、円盤形、角型などの形や大きさ、複数(例えば大小)成分の存在など)の大きく2つのカテゴリーがあります。デンプンは他の高分子には無い特有の性質(糊化、粘性、老化、膨化など)がありますが、こうした性質は、アミロースやアミロペクチンの分子構造に加えてデンプン粒構造も大いに関係しています。植物種ごとにデンプンの性質は異なっていますが、産業界では経験的にこうした性質の違いを生かして製品ごとに最もふさわしいデンプンの種類を選んで使用しています。

さてご質問の「イモデンプン」と「クズデンプン」との違いですが、上記の説明からも分かるとおり、①アミロースの分子構造、②アミロペクチンの分子構造、③アミロースとアミロペクチンの存在比率、④デンプン粒の形、などが違うことに基づいています。

イモには、ご承知のようにジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、ヤマノイモなどがありますが、例えばデンプン粒の形は、驚くほどお互いに違っています。同じイモでも、デンプンの性質が違っている理由がこれからも分かります。クズデンプンに関しても、デンプン粒が特有の構造と分布を持っていることがお分かりいただけると思います。

【参考文献】
室屋賢康、甘藷澱粉およびその他の澱粉、「澱粉科学の事典」(不破英次、小巻利章、檜作進、貝沼圭二編)、朝倉書店、387-393頁、2003年

中村 保典(秋田県立大学生物資源科学部)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2008-04-30
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