一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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気孔の増減

質問者:   中学生   香南子
登録番号1598   登録日:2008-05-02
この前の気孔についての質問の回答ありがとうございました。二酸化炭素で気孔が減っていると書いており先生に聞いてみたのですが分かりませんでした。なので、二酸化炭素によって気孔が減るメカニズムみたいなものを教えてください。
香奈子 さま

前回のご質問(登録番号1580)に対する回答で、植物を大気の二酸化炭素(CO2)濃度が高い条件で育てると葉の面積当たりの気孔の数が少なくなることについて、大気CO2濃度の低かった200年前(270ppm)の植物の押し葉標本と、(CO2濃度が380ppmと高くなった)現在の大気の下で育った同じ種の植物と比較した例について紹介しました。気孔の数は、植物の種類、それが育った大気CO2濃度などによって葉の面積1平方ミリメートル(1ミリメートル四方)当たり5 〜1000位の範囲で変動します。いくつかの植物についてCO2濃度を変えて育て、葉の面積当たりの気孔の数を調べた結果も、CO2濃度が高くなるほど気孔の数が少なくなることが観察されています。

 今回のご質問はなぜ、CO2濃度が高いところで育てると、葉の面積当たりの気孔の数が少なくなるのかについてですが、これについては以下のように考えられています。前回の回答にもありますように、気孔は、光合成のために必要なCO2を大気から葉の細胞に吸収するためと、蒸散作用で水を放出するための二つの役割をもっています。蒸散作用によって葉の温度の調節、根からの水の吸収、それに伴う根からの無機養分の吸収を促進しています。気孔の数を多くすればCO2を多量に葉の細胞にとりこむことができますが、水が蒸散作用で失われる量も多くなり、土に水が充分にない場合は葉がしおれやすくなります。そこで、植物は水を余り失わないように気孔の数を少なくした方がよいのですが、余り気孔を少なくしすぎると光合成の効率が低くなるため、そのバランスがうまくいくように気孔の数を調節していると考えられています。しかし、大気のCO2濃度が高くなると気孔の数を少なくしても葉の細胞に中にとりこまれるCO2の量を同じ量にすることができるため、気孔の数を減らし水が不足したときでもしおれないようにしています。現在、CO2濃度が高くなると、どのようなメカニズムで気孔の数が少なくなるのか、一般的には、気孔の葉の面積当たりの数をどうして決めているのかについて、気孔の数を決めている遺伝子の探求、その遺伝子に信号を伝えるシステムなど、いろんな方向から研究されています。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2012-08-25
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