一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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すいかのたねの位置について

質問者:   小学生   よっしゃー
登録番号1761   登録日:2008-08-29
 祖母が「スイカは緑のしまのないところを切るとタネが出ない」というので、夏休みの自由研究で調べることにして、スイカを食べる時にしまのある所やない所をいろいろ切って、タネの位置や並び方を調べてみました。確かに緑のしまがある所にはタネが集まっていて、しまのないところは、タネが少なかったです。なぜなのか理由が知りたいです。教えてください。また、スイカのしまもようはどんなふうにしてできるのでしょうか?
あわせて教えてください。
よっしゃー様

“みんなのひろば”へのご質問ありがとうございました。折角質問して下さったのですが、東京大学の塚谷裕一先生に伺ったところ、以下のように、縞の位置と種子の位置には関係がないとの回答でした。回答を詳しく読んで下さい。


よっしゃーさん、

ご質問ありがとうございます。
質問にお答えする前に、タネのないところでスイカを切る確実な方法をお教えしましょう。まず、実を縞に対して直角に切ります。そうすると、中心から3本の線が放射状に出ているのが見えますね。スイカの実は、もとを正すと、3枚の葉が集まってできたものなのです。こんなふうに実を作るもととなっている葉のことを、心皮(しんぴ)といいます。この3本の線は、その心皮の名残です。スイカを含むウリ科の植物は、皆そうやって3枚の心皮でできた実を付ける点で、共通しています。例えばキュウリも、切ってみると3カ所でタネが塊になっていますよね。
さてスイカの断面をよく見ると、この3本の線は中心から皮に向かってまっすぐ伸びていますが、それぞれ、皮の近くではくるりと湾曲しています。スイカの種子は、その湾曲した先端から、ちょっと離れたところにかたまっています。ですので、タネのないところで切りたい場合は、最初に見つけた3本の線に沿って切ると確実です。実際に試してみると、全くタネが出てきませんでした。あるいは線と線の間の真ん中付近と、実の中心とを結ぶ線で切ると、やはりタネが出てきません。実際にやってみて下さい。うまい工合に、タネが全く見えない断面ができるはずです。これはスイカの実の構造がそうなっているためです。
さてご質問は、以上のようなやり方ではなくて、表面の縞模様を手がかりにしようということですね。さてどうでしょう。縞模様は上で述べたような、3枚の葉の位置関係とは無関係にできるようです。実際に私の研究室で、合計3個のスイカを切ってみましたが、ご質問のようにはいきませんでした。また逆に、上に書いたやり方で、タネのない断面を作っておいて、その位置が縞の位置とどう関係しているか確かめてみると、結果はまちまちでした。断面が縞の中央に重なることもあれば、色の薄いところになることもありましたし、縞の端をかすめることもありました。縞の位置とはやはり無関係です。
そもそも縞をよく観察してみると、太くまっすぐ実の端から端まで伸びているものもあれば、途中で消えてしまうもの、隣の縞と合流してしまうものなど、けっこういろいろです。タネの列は、これと違って端から端まできれいに伸びていますから、その点でも縞との対応は付きません。
また、実の列は上に書いた理由から、大体スイカの場合大きく見て断面上6カ所にかたまっています。しかし縞の数は、実にもよりますが14-17本くらいです。もし縞の位置とタネの列とが一致しているなら、縞の数は3の倍数になるのが自然ですが、例えば3の倍数の15本というのは、あまり見られません。
ではこの縞は何でしょうか。ウリ科の果実には、カラスウリやマクワウリの仲間など、緑の濃淡でできた縦縞模様を作る種類が少なくありません。いずれも、よく見ると枝分かれしたり中央がかすれたり、あるいは太い縞の間に細い縞や斑点が間に入ったりと、独特の模様になっていて、単純な縦縞ではありません。動物でもこれに似た縞がありますね。そう、シマウマの縞とか、タテジマキンチャクダイの縞です。あの縞は、「反応拡散」という仕組みで作られるもので、表面積の拡大にともなって変化することが知られています。反応拡散の仕組みは、これだけでも説明がたくさん必要なので、また別の機会に説明を聞いてもらえればと思いますが、多分、スイカの縞も、こうした仕組みでできる縞で、だからこそ、枝分かれしたり細かい模様と混ざったりしているのでしょう。縞の位置は、中のタネの位置とかいったものとは、関係がないと思います。たまたま一致することもあるでしょうが、あくまで偶然でしょう。確実に種のないところできることが必要であれば、やはり、最初に述べたように、実の中心から放射状に伸びる3本の線を見つけておいて、それを基準に切り分けるのが、もっとも確実です。

塚谷 裕一(東京大学大学院理学系研究科・教授)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2008-09-17
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