一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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茶カテキンの抽出方法

質問者:   高校生   あゆみ
登録番号1816   登録日:2008-10-19
私はドイツの高校卒業研究で緑茶の抗酸化作用について論文を書いています。
そこで全ての実験の前提になるカテキン(タンニン)の抽出方法を探しています。

例えば沸騰水抽出を試みたいのですが、原則として高校の実験室を使って実施することになっているので、カテキンを熱湯や(又はEtanolやAceton) に溶かしだした後、蒸留や遠心分離するための装置は十分に揃っていません。
今まで、インターネットや大学の専門書でも調べてみましたが、なかなか簡単な方法が見つかりません。

学校の実験器具を使った範囲の最も簡単な抽出方法があればとても助かります。
よろしくお願いします。
                                あゆみ
 
あゆみ さん

私の方の事情で、回答をお届けするのが遅くなって申しわけありません。
ドイツの高校で緑茶の抗酸化作用について卒業論文を書かれておられるとのこと、良い論文が出来上がることを期待しております。

さて、ご存知のことと思いますが、緑茶のカテキン類にはエピガロカテキンガレート、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピカテキンなどと呼ばれる構造・性質の異なる種類のカテキン誘導体が含まれております。しかし、緑茶のカテキン類は水溶性で、その含量も高いので、乾燥した“茶葉”から熱湯などで容易に抽出することができます(お茶の渋みが出るのが目安になるかと思われますので、常温で時間をかけて抽出することも可能です。また、貴方も書かれているように、アルコールやアセトンなどによる抽出もできます)。なお、緑葉(生葉)から直接抽出する場合には、別の工夫が必要になります。

ところで、貴方の実験にはカテキン類の各誘導体を純粋に入手することが必要になりますね。抽出の段階を工夫して、カテキン類全体またはその各誘導体類を選択的に抽出することができれば良いのですが、これは少し難しいように思います。
そこで、次には、熱湯(または、アルコール、アセトンなど)抽出物の中から、希望する化合物を分別(選別)することになります。分別する方法には、抽出液の酢酸鉛による処理などをはじめとする古典的な化学操作(分別沈殿とか異なる溶媒間での分配の違いを利用するやり方など)が必要となりますが、これらはどちらかと言えば過激な化学薬品と特別な器具を使用することになるのが欠点です。温和な方法としてはカラムクロマトグラフィー(例えば、セファデックスを使用)による分別方法がありますが、高等学校の貴方の実験室環境で可能なのかどうかは分かりません。もし、蒸留や減圧濃縮ができないとしたら、手法は大きく限定されてしまいます。

なお、熱抽出物そのものを使って、これをカテキンとみなして実験することも考えられますが、熱(水)抽出物の中には多くの他の化合物が含まれており、例えば抗酸化能のあるビタミンCなども含まれておりますので、幾分工夫をして考察する必要が生じて来るものと思われます。

以上、お求めの手法を直接お教えすることはできませんが、この回答から何かお役に立つヒントが得られたとしたら有り難いと思っております。

回答が遅くなったことを重ねてお詫びします。
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2008-11-17
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