一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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クローバーについて

質問者:   中学生   ゆり
登録番号2089   登録日:2009-10-05
私は、自由研究でクローバーについて研究しています。
 この間の回答を参考にさせてもらったところ、町の展覧会で埼葛推薦賞になり、もうすぐ埼葛展があります。ありがとうございました。
 
 クローバーの染色体数を調べたところ、[2n=16,28,32,48,64]という数字がでてきました。これは、どういう意味ですか?

 それから、4つ葉のクローバーの発生原因は、遺伝的要因か環境的要因かはっきりと分かっていないのですか?(分かっていないのであれば、夢としては発生原因を突き止めたいと思うのですが……)

 違うタイプのクローバー(シロツメクサ)を交配して、どんな遺伝をするのか興味をもちました。どのような方法で実験すればよいのですか?
ゆり さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
クローバーは身近な植物ですので自由研究の題材として取り上げるのにはよい材料のように見えますが、必ずしもそうではなさそうです。いろいろ調べた結果をまとめてご質問にお答えすることにします。

1)クローバーの染色体数を調べたところ、[2n=16,28,32,48,64]という数字がでてきました。これは、どういう意味ですか?
「クローバー」とよばれる植物はマメ科のTrifolium (シャジクソウ属)に属するものの総称として使われるときと、もっと狭く「シロツメクサ(Trifolium repense L.)」を指すときとがあり、ときどき混乱することがあります。Trifolium属の中は遺伝的変異が多く染色体の数もいろいろで、基本的染色体セット(ゲノム)を構成する染色体数(xで表示します)が、5、6,7,8本のものがあります。ふつうは、基本的染色体セットが2組ありますので 2n = 2xと表示します。ですから、染色体数は、5、6,7、8の倍数となり、32本であれば x = 8 をもつものの4倍体ということになります。Trifolium属には2倍体と4倍体とが混在しています。しかし、シロツメクサの染色体数に関しては 2n = 4x = 32 と測定されています。これは、2n = 2x = 16の染色体が倍加した4倍体を意味しています。ところが、同じ2n = 16の染色体セットが倍加したもの(同質4倍体)でなく、違った(しかも遺伝的にかなり離れた)2種類の2n = 16の祖先植物が融合して4倍体になったもの(異質4倍体)とされています。2n = 64というのはおそらく、この4倍体がさらに倍加して8倍体になったものと思われます。文献でその存在を確認できませんでしたが、存在する可能性は十分あります。2n = 28, 48についてですが、Trifolium属植物のアカツメクサ(ムラサキツメクサ、アカクローバー、Trifolium pretense L.)やベニバナツメクサ(クリムズンクローバー、イタリアンクローバー、T. incarnatum L.)は2n = 2x =14でその4倍体(2n = 4x = 28)が知られていますので、これらの数が混同されたのではないかと思われます。日本の農林水産省や米国農務省の記載では、シロツメクサは4倍体32、アカツメクサは2倍体14、4倍体28とされています。
2)4つ葉のクローバーの発生原因は、遺伝的要因か環境的要因かはっきりと分かっていないのですか?(分かっていないのであれば、夢としては発生原因を突き止めたいと思うのですが……)
 たくさんのご質問をいただいている疑問ですが、登録番号0624に塚谷先生が分かりやすく解説されておられますのでそれを読んでください。発生原因の1つでもはっきりと分かれば素晴らしいことだと思います。
3)違うタイプのクローバー(シロツメクサ)を交配して、どんな遺伝をするのか興味をもちました。どのような方法で実験すればよいのですか?
 シロツメクサは同じ染色体構成でも変異がとてもたくさんあることが分かっています(よい例はヒトという生物種です。遺伝的にはとても変異が多くなっています。DNA検査で個人が特定できるほどです)形態もいろいろで、大きいもの、中位のもの、小さいものといった分け方すらしています。また、1つの群落(集団)の中でも変異が多く、形態的、生態的特性が異なる個体が混ざっています。これらの変異は遺伝的なもので、その遺伝的変異の幅(個体間の遺伝子の不均一性の程度)が大きく、1群落内でも微環境(局所的な温度、湿度、日照、土壌の質、栄養の偏りなど)の影響を強く受けるので、いろいろは表現形質のものが混ざってきます。そのため、選んだタイプ(形質のことと思いますが)が環境によって発現したものか、遺伝子変異によるものかによって結果が異なりますのでよく考える必要があります。さらに、シロツメクサはほとんどが他殖(他個体の花の花粉がついて種子を作る)で種子を作ります。花軸の先に数十個の小さい花が球状についていて、1つの花からは2,3個の種子しかとれません。花粉親にする個体から取った花を受粉親の花序にこすり付けるようにして花粉をつける方法が記載されています。このとき受粉親の柱頭が少し傷つくようにした方が花粉の発芽を促進するとの報告もありました。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2009-10-16
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