一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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低温湿潤処理とは

質問者:   大学生   ぐっちー
登録番号2261   登録日:2010-07-22
はじめまして、私は短大でコウボウムギの発芽と生育の方法について研究しています。現在、コウボウムギを春播きと秋播きにわけて育てているのですが、秋播きのものは無事に3ヶ月ほどで発芽し生長しているのに春播きのものはなかなか発芽しません。もしかしたら、コウボウムギは低温要求するのではないかと思い調べたていたところ、このサイトでコウボウムギの発芽には低温湿潤処理がもとめられると書かれていたのですが、低温湿潤処理について詳しく教えて下さい。
ぐっちー様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。コウボウムギの発芽を調べておられるとの事ですが、種子の発芽生理に関する一般的な事柄については、何か参考資料を読まれましたでしょうか。多くの野生種子は成熟すると一般に休眠に入ります。特に季節のある地域の植物は、夏〜秋に種子ができても、そのまま発芽すると寒い冬に時期に遭遇し、生育に著しく不利となります。そのため、発芽は気温が暖かくなって、環境条件が整うまで起こらないようになっています。つまり、このような植物の種子は低温の時期を経験して初めて発芽できるのです。小西国義著「植物の生長と発育」養賢堂という本がありますが、もし入手できたら、みて下さい。その中に、低温要求種子のリストと温度の表があります。本質問コーナーの回答の中でもその一部を紹介しています(登録番号0914)。また、講談社のブル-バックス「これでナットク!植物の謎」日本植物生理学会編も見て下さい。これらを読めばすべて詳しい回答が得られます。簡単に説明すれば、乾燥種子をそのまま冷やしてもだめで、吸水させた上で、適当な低温条件下に、ある一定期間乾燥しないようにして置けばよいのです。コウボウムギの種子は何度で何ヶ月間おけば良いのかは分かりません。研究報告例はないと思いますので、自分で調べてみるよりほかにないでしょう。ただ、試してみるのでしたら、吸水させた種子を湿った種子床(ろ紙、キッチンペーパー、バミキュライト等等)に置き、乾燥しないように注意して冷蔵庫に1〜2ヶ月保管し、その後常温に戻してみて下さい。低温要求種子なら、100%でないにしても発芽が見られるでしょう。なお、他の要因で休眠が誘導される種子もあります。種子休眠については古いですが、UP BIOLOGYのシリーズで「植物の休眠と発芽」藤伊 正著 東京大学出版(1975)があります。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2010-07-28
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