一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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導管液と師管液

質問者:   高校生   椎名
登録番号2313   登録日:2010-09-24
はじめて質問をします、椎名です。よろしくお願いします。

植物は、土壌中から吸収した水分や無機養分を導管を通じて運び、それらを用いて光合成をおこない、作られた有機物は師管を通って各器官に運ばれますよね。

導管液と師管液に何が含まれているのか具体的に調べてみたいんですけど、それらを分けて採取する方法って何かいいものないでしょうか?
椎名 さん

このコーナーに質問をお寄せ下さりありがとうございます。この質問には東京大学で植物の栄養について研究をされている藤原 徹先生が下記のような回答文を用意して下さいましたので、ご参考にして下さい。ところで、このテーマに少し関係すると思いますが、“ヘチマ水”ってご存知ですか。




(藤原 徹先生からの回答)

篩管液と導管液の成分を知ることは植物生理学者の長い間の課題でしたが、植物の篩管と導管は維管束という部分にまとまってあるために、単純に茎を切るだけでは両者を分けて採取することは難しいです。篩管液を採取する方法でよく使われるのは吸汁昆虫を使うものです。アブラムシやウンカは植物に口針を刺し、篩管を探し当ててその中の甘い汁を吸います。アブラムシやウンカには申し訳無いのですが、甘い汁を吸っている昆虫の口針を電気刺激やレーザーで切り、切り口から出てくる液を採取して分析することによって篩管液の成分が調べられています。ヒマという植物などでは芽生えの双葉の付け根を切ることで甘い汁(篩管液)を採取することができます。導管液については植物を切断した時に得られる液を導管液として分析することが多いです。分析しようとしている椎名さんにお答えをあまりお話ししてはいけないかもしれませんが、篩管液にはショ糖やアミノ酸が高濃度に含まれていますが、カリウムやマグネシウム等も含まれています。導管液には無機塩類だけでなく濃度は低いですがアミノ酸や有機酸が含まれています。余談ですが、このお答えでは師管を篩管と表記しました。篩管は、篩管を形成する細胞の間の細胞壁にふるい(篩)のように穴があいていることから名付けられました。本来師管は篩管と書かれるべきですが、篩という文字が当用漢字に含まれなくなってしまったため、当て字で師管と表記されるようになっています。



藤原 徹(東京大学大学院・農学生命科学研究科-植物栄養・肥料学研究室)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤公行
回答日:2010-10-05
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