一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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根におけるエチオプラストの働き

質問者:   大学院生   ひまじん
登録番号2318   登録日:2010-10-07
私はシロイヌナズナを用いて植物の根の発生機構についての研究をしている院生です。根に存在する色素体の一つエチオプラストの作用、またはその存在意義(何のために根に存在するのか?)を教えて頂きたいです。
ひまじん さん


本コーナーに質問をお寄せ下さり有り難うございます。

この質問には、プラスチドのことについて詳しい岡山大学資源植物科学研究所の坂本先生が回答文をご用意くださいました。ご参考にして下さい。





(坂本先生からの回答)

ひまじんさんは根の研究をされているということですが、まずはじめに、根におけるプラスチドの呼称を整理しておきます。ひまじんさんは根にある「エチオプラスト」と書いていますが、エチオプラストとは暗所の子葉などで見られるプラスチドで、特徴としてはプロラメラボディと呼ばれる構造を持つことがあげられます。あくまでもプロプラスチドから葉緑体への分化途中のプラスチドであり、葉緑体へ分化することのない根のプラスチドの呼称としてはふさわしくありません。



それでは、根のプラスチドを何と呼べば良いかとなると、実際にはなかなか難しいところです。幾つかの文献ではロイコプラスト(白色体)と書いていますが、これは色素を持たないプラスチドの総称であり、アミロプラスト、エライオプラストなどが含まれます。またあまり一般的ではない気もします。そこで、単にプラスチドと呼ぶのが適当かと思います。さらに明らかにデンプンを蓄積しているものは区別して、アミロプラストと呼ぶのが適当でしょう。整理しますと、根では分裂組織にあるプロプラスチドがプラスチドとなり、一部の細胞においてはデンプンを蓄積したアミロプラストになると言えます。



さて本題の根でのプラスチドの作用ですが、光合成以外のプラスチドの機能として脂質合成などが知られていますので、根でもこのような機能に関わっているのではないでしょうか。また根冠のコルメラ細胞にあるアミロプラストは重力感受体として働いていることが知られており、これも根でのプラスチドの重要な役割と言えます。しかし、根などの非光合成組織でのプラスチドの重要性、存在意義についてはまだ未解明な部分が多いです。



この分野(非光合成組織でのプラスチドの存在意義)にはまだまだ謎が多く、やりがいのある研究テーマだと思いますのでひまじんさんが積極的に取り組むのはいかがでしょうか(笑)?



坂本 亘(岡山大学・資源植物科学研究所・植物ストレス科学共同研究コア・光環境適応研究グループ)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤公行
回答日:2010-10-14
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