一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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窒素固定と根粒について

質問者:   公務員   kibituhiko
登録番号2600   登録日:2012-02-19
マメ科などの植物は,共生する根粒菌が空中窒素を固定するために,いわば根で窒素肥料を合成することができる,と習いました。この質問コーナーでも,窒素固定にかかわる質問をいくつか拝読しました。
ただ,「土中」にある根粒菌が,どうやって「空中窒素」を固定するのかがどうしても分かりません。ネット上でもかなり検索しましたが,あまりに基礎的な知識であるためか,はっきりと書かれているページが見つかりませんでした。
素人考えでは,「土中に含まれる空気から窒素を取り込む」「葉などから吸収された窒素が根に運搬される」といった仕組みが思いつきますが,実際のところはどうなのでしょうか。
kibituhiko さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ご質問の主旨は、根粒菌による窒素固定の仕組みでなく、どのような状態の窒素を利用するのか、ということだと思います。それにしても少しばかり窒素固定の仕組みをお話ししないと理解しにくいと思いますので、ちょっぴりその点に触れます。
根粒菌(窒素固定菌は他にもあります。登録番号1829を参照してください)は、空気中のガス状の窒素を捕まえて、還元(水素を附加)する酵素複合体(働きの違う幾つかのタンパク質が集まったもの)をもっています。この酵素複合体をニトロゲナーゼと呼んでいます。ニトロゲナーゼは細菌類の一部のみがもっており、細胞核をもつ植物や動物などにはありません。1分子の窒素(N2)を基質(酵素反応の材料のようなものです)として2分子のアンモニア(NH3)を生産する酵素活性をもつ酵素複合体で、大きなエネルギーを必要とする反応を触媒しています。最終産物アンモニアの水素は、代謝系から供給される還元力(電子、エネルギーに相当します)が窒素原子を還元したときに生ずるマイナス性が、水の水素イオンを取り込んで中和されたものです。根粒菌は根粒の中でバクテロイドと呼ばれる特殊な構造となって窒素を固定しますが、根圏が発達する土壌中には空隙がたくさんあり根粒組織内には空気が十分ありますので、材料の窒素には困りません。他の部分からわざわざ運んでくる必要はありません。ニトロゲナーゼの最終産物アンモニアはその場で根に吸収されアミノ酸やその他の含窒素有機化合物の合成に使われることになります。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2012-02-21
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