一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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減数分裂の方向と珠孔の位置関係について

質問者:   教員   まっちん
登録番号2624   登録日:2012-04-09
初めて質問させていただきます。
胚のう母細胞が減数分裂してできた4つの細胞のうち3つは消失してしまいますが、消失する細胞の位置は珠孔の位置と関係があるのでしょうか。それとも全くランダムなのでしょうか。
授業で板書するときには無意識のうちに消失した細胞は珠孔と反対側に書いていましたが、使用している教科書では逆になっていたので疑問に感じました。
生物Ⅰの教科書をいくつかみたところ、出版社によってまちまちでした。
よろしくお願いします。
まっちん様

お待たせいたしました。頂いたご質問の回答を植物の受精についての研究をなさっておられる名古屋大学の東山哲也先生にお願い致しましたところ、まっちん様のご満足が頂ける、以下のような回答をお寄せ下さいました。これからは、堂々と授業でしゃべって下さい。


東山先生のご回答
多くの場合、胚嚢母細胞(大胞子母細胞;英語ではこれに対応するmegaspore mother cellが一般的)が減数分裂し、胚珠内に縦に4つ並ぶ細胞(大胞子)をつくります。そして、合点側(珠孔と反対側、ごうてんがわと読む)の1つの細胞が残り、珠孔側の3つの細胞が退化します。
多くの場合と書いたように、例外もあります。アカバナ科の植物などでは、珠孔側の大胞子が胚嚢になり、クノニア科の植物などでは中間の大胞子が胚嚢になる場合があります。また、減数分裂後の大胞子は、必ずしも縦に4つ並ぶわけではなく、ラン科やタデ科の植物ではT字に配向する例も知られます。
退化する細胞の位置は、植物種ごとに遺伝的にプログラムされていると考えられます。しかし、胚嚢になる大胞子がどのような仕組みで決まるのかは、まだ明らかになっていません。退化する細胞では、アポトーシス(プログラムされた細胞死)が起こっていることが示されおり、また、古くから退化する細胞ではカロースの沈着が見られることも知られています。胚嚢になる大胞子の位置が、大胞子母細胞の極性に依存するのか、あるいは周囲の細胞との関係の中で決まるのか、様々な可能性が考えられ、今後の研究の進展が期待されます。
これらに関する詳しい記載は、「植物の発生学」(講談社;S.S. Bhojwani and S.P. Bhatnagar著、足立泰二・丸橋亘 訳)、または英文になりますが、“The Female Gametophyte” G.N. Drews and A.N. Koltunow (2011) Arabidopsis Book 9, e0155
http://www.bioone.org/doi/abs/10.1199/tab.0155
などにありますので、合わせてご参考下さい。

東山 哲也(名古屋大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2012-04-23
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