一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ハスの葉の泡はどうしてでるのでしょう?

質問者:   一般   りんご
登録番号2717   登録日:2012-08-12
ユーチューブで葉の中心に水を入れると泡がぶくぶく出る映像がありました。
自分でやってみると出る葉と出ない葉がありました。
登録番号1746の(4)の回答をみると「ハスでは、若い葉に太陽の光があたると、葉が暖まります。そのとき、若い葉の中の細胞と細胞の隙間(細胞間隙といいます)の空気が膨張し、圧力があがります。その圧力の高い空気が、若い葉の葉柄の通気組織を通って、地下茎の通気組織に移動して、地下茎に酸素を送っています。地下で呼吸してでてきた二酸化炭素は古い葉の葉柄の通気組織を通って、水面上に出てきます。」とありました
泡の出る葉は古い葉で、出ない葉は酸素を送っている若い葉ということでしょうか?若そうに見える葉もうまく出ないのがあってわかりますん。
酸素を送る力の弱い葉は、二酸化炭素が出てくる力の方が強くなるということでしょうか?
りんご様

みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。頂いたご質問の回答を登録番号1746 を担当して下さった、東京大学の野口 航先生にお願いいたしましたところ、以下の様な回答をお寄せ下さいました。私もハスの葉が複雑な構造をしていることを改めて勉強しましたが、りんご様もしっかりハスの葉について勉強して下さい。

野口先生のご回答

はじめまして。
登録番号1746を回答した野口と申します。
前回の回答に間違いがございました。はじめにお詫びを申し上げます。
前回の回答は水生植物のスイレンに当てはまる現象で、ハスでは違った現象が起きているようです。
長い回答ですが、お付き合いください。

ハスの葉もスイレンの葉とおなじく、葉内に細胞間隙(細胞と細胞の隙間)があり、葉柄内の通気組織につながっています。
ただし、ハスの葉はスイレンの葉と異なり、細胞間隙と通気組織がつながった構造体が、葉内と葉柄内で完全に2つに分かれています(スイレンは1つのようです)。

ハスの葉を観察しますと、葉の表面に真ん中に丸い小さなフタのような部分があります。
このフタのような部分には、大きな気孔(空気を出し入れする隙間)があります。
この気孔は、細胞間隙と通気組織がつながった構造体の1つとつながっています(もう片方はつながっていません)。
つまり、葉の約半分くらいの部分には、この気孔とつながった構造体(構造体Aとします)があり、残りの半分くらいの部分には気孔とはつながっていない構造体(構造体B)があります。
この大きな気孔はまわりの環境に応じて、開閉します。

ハスの葉は、まわりの空気の温度よりも暖められると、その葉内の細胞間隙部分が加圧されます。
構造体Aが加圧されると、葉では出口がないので、酸素を含んだ空気は葉柄を通じて、地下茎に送り出されます。
地下茎で呼吸されて二酸化炭素を含んだ空気は、葉柄を通じて構造体Bに送り出され、気孔が開いていれば、気孔から空気は出ます(この気孔が出口となります)。

したがって、葉の中心に水をいれたとき泡がぶくぶくと出ているときには、上のようなことが起きている場合です。

泡が出ない場合には、以下のこと考えられます。

1)葉がそれほど暖まっておらず、葉内が加圧されていない(直射日光が当ると良く加圧されるようです)。
2)空気が通る経路がつまっているか、孔があいてしまっている。
3)葉の真ん中の大きな気孔が何らかの理由で閉じている。
4)水中で泡を形成するために充分な圧力が形成されていない(加圧が不十分)。

ハスの葉では、かなり齢の進んだ葉でも加圧されるそうです。

以上です。不明な点があれば、またご質問ください。

野口 航(東京大学)
日本植物生理学会サイエンス・アドバイザー柴岡弘郎
回答日:2012-08-17
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