一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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地下茎からの発芽

質問者:   自営業   野良猫
登録番号2767   登録日:2012-10-08
竹、ミョウガ、ドクダミなど、地下茎で広がり発芽する植物を、栽培していますが、希望しない場所に発芽して、困惑します。排水の掘割などで、防いでいるのですが、迂回して生えてきます。地下茎は伸びながら、茎がどのような状態になると、発芽するのでしょうか?宜しく御願いします。
野良猫様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。まず用語のことですが、地下茎というと、ジャガイモのような塊茎、ユリネのような鱗茎、グラジオラスのような球茎そしてタケのような根茎を総称することになりますので、ここで問われている地下茎は根茎ということで回答します。根茎は地上の茎と同じように茎頂(先端)で伸びて行きます。そして節が形成され、そこでは地上の茎と同様に側芽がつくられます。タケの場合を例にとると、地上の茎がそのまま地下で匍匐して生長しているようなもので、根茎の節は地上茎の節に対応します。地上では節から枝がでてきますが、根茎では筍ができます。したがって根茎からの「発芽」は根茎の節にできた側芽の生長とうことになります。そこで、側芽の生長(発芽)はどのように調節されているかというと、茎の場合は膨大な研究がこれまでにあり、一つはっきりしていることは、茎頂に近い所の節にできる側芽は発芽が抑えられているということです。つまり、茎頂が側芽の生長を抑えているのです。この現象を「頂芽優勢」と呼んでいます。頂芽と切り取ってしまうと、直ぐ下の側芽は生長を始める(発芽)ことができます。このような側芽の調節にはいくつかの植物ホルモンが関係しています。登録番号1913、2465、2586の回答を読んで下さい。また、「頂芽優勢」で検索して,他の関連の質問への回答も読んで下さい。さて、根茎の場合はどうかというと、やはり、頂芽優勢が存在します。いくつかの例で、根茎の茎頂を切除すると側芽の生長(根茎からの発芽)が開始することが知られています。また、地上茎と同様の植物ホルモンの関与が示されています。以上のべたことは植物が正常な状態にあるばあいの一般的なことですが、さまざまな外的要因が内的な調節機構に影響をおよぼすことは勿論あります。タケの根茎の発芽と地下水位との関係を調べた研究が土木学会で報告されていますが(H20年)、それによると、根茎が地下水面より上にあると、発芽も生長も良いということです。側芽の発芽は植物の種類によっても、土壌の性質、栄養などによっても影響を受けると考えてよいでしょう。なお、根茎は根や地上茎と同じように、なんらの抵抗がなければまっすぐ伸びます。茎頂が排水の掘割にかぎらず、石やなにか固い物に突き当たれば、当然茎頂は曲がって伸びて行くことになるでしょう。根茎で増える植物をある区域の中にとどめておきたいのなら、しっかりと周囲をコンクリートの用なもので囲い込んでしまうことですね、そうすると,根茎はその中をぐるぐる廻るように伸びて行くと思いますが、それは植物にとってはストレスにもなりますから、どの程度よく増えるかはやってみないと分かりません。発芽した根茎を部分的に切り取って、望む所に植えれば、そこで、新しい個体が育つことになりますので、そういう方法もあるのではないでしょうか。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2012-10-12
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