一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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なぜ街路樹の落葉は遅いのか?

質問者:   会社員   fhan0112
登録番号2790   登録日:2012-11-25
札幌には、街路樹が数多く植えられていますが、11月下旬ともなると、ニセアカシアとアカナラを覗いてほとんどの街路樹が葉を落としてしまします。
今回質問させていただく内容は、落葉の早晩です。
公園や道路の中央分離帯に植えられている樹木はほとんど落葉しているのですが、その年に剪定された街路樹は、樹種に関わらず、秋遅くまで葉をつけている樹が多いようです。それも紅葉が遅いだけではなく、少し色あせた緑色をした葉やきれいに紅葉しそこねた葉をつけた樹をよく見かけます。
これは、通常落葉時に起きるメカニズムに何か異変がおきたのでしょうか?
たとえば、剪定によって本来できる光合成ができなくなり、それを取り返そうと秋遅くまで頑張ろうとしているのか、それとも、剪定により落葉のメカニズムが狂い、きれいでない紅黄褐葉の葉をいつまでもつけているのか?
など自分なりに想像をしてみるのですが、確証など得られません。
普段みている街路樹の素朴な疑問ですが、お答えいただければありがたいです。  
fhan0112 さん:

みんなの広場質問コーナーのご利用ありがとうございます。
植物の営み、生きざまの基本的な仕組みを研究している私たちにとってご質問は、樹木に与えた剪定という植物にとっては非常に大きな物理的刺激が、どのように樹木全体の活性に影響を及ぼし、その後に起こる紅葉、落葉といった生理的現象にどのような効果をもたらすか、という設問となります。残念ながら、現在これにお答えするだけの科学的知見を私たちは持っておらず的確なお答えを致しかねます。植物生理学的に分かっていることから推定できる範囲に限らせて頂きます。
ご質問にある「街路樹の剪定」は文意から推定すると「夏季剪定」のことと思われます。樹形を整えるというより、「邪魔な」枝を切り落とすことが目的になっているようです。剪定の植物生理学的な根拠は頂芽優勢、「頂芽を切断すると、腋芽の生長が開始する」という現象にあります。樹勢の盛んな時期ですから新たに成長する枝は、既存の枝に比べれば若く、その生理的活性も強いので、紅葉、落葉の前提となる老化が遅れることは十分考えられます。
紅葉、落葉にみられるように、個々の葉や樹木間の色素形成の速さ、量、落葉時期は一様ではありません。これは、個々の葉、樹木を取り巻く微小環境、葉や茎の生理齢の進行などが少しずつ違うことによります。
したがって、夏期の強い剪定によって生じた新たな枝に起こる現象は、それ自体の齢に加え母体が受けた大きな物理的刺激の影響をも受けていることになり、紅葉、落葉が順調に進まなかったり、遅れたりすることは考えられることです。落葉のメカニズム(仕組み)が違うというよりもメカニズムを作動し、制御する要因が変わるためと言えます。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2012-11-28
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