一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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大田の沢のかきつばた

質問者:   自営業   本郷大田子
登録番号3269   登録日:2015-05-06
京都上賀茂大田神社の前に居をかまえてます。よって、天然記念物に指定されている杜若を60年程興味を傾けています。今年も見事に咲いたいますが、一昨日突然白いカキツバタが一輪咲きました、過去初めての珍事に驚いてます、こんな事があり得るのですか、大田の杜若は紫でないとと思いますが、あり得なかったら何かの間違いですのですぐさま手を打たないと広がったら天然記念物の価値がなくなります。教えて下さい。
本郷大田子さま

みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。頂いたご質問の回答を遺伝学がご専門の奈良女子大学の鈴木孝仁先生にお願いいたしましたところ、以下の様なご回答をお寄せくださいました。ご回答にはいろいろな可能性が書かれていますが、可能性一つずつにについて検討して、どうしたら良いのか決めて下さい。私個人の考えでは白い花の個体は取り除いた方が良いように思います。 


【鈴木先生からのご回答】
白いカキツバタの花は、園芸品種にあります。そこで、突然に咲いた白い花が外部から園芸品種の種子が持ち込まれた、あるいは園芸品種の種子が自然に紛れ込んだのかを確かめる必要があります。いずれにしても園芸品種が紛れ込んだのであれば、その個体のみが白い花を付けるはずなので、植物個体ごと取り除く必要があります。

外部から持ち込まれたのではない場合として考えられる可能性は、遺伝的な突然変異によって紫色の色素形成能が失われた場合です。
もし突然変異が起こってしまった個体の種子から生えてきた個体が白い花をつけたのであれば、同じ個体で2番目以降の花も白くなるはずです。
もう一つ別の可能性としては、本来は紫色の花を付ける個体で、茎頂分裂組織での花芽となる予定の細胞が出来る細胞分裂のどこかの過程で染色体構成が変化して、紫色になる遺伝子が失われる場合と、あるいは普通は劣性の白い花になる遺伝子が優性の紫色になる遺伝子とヘテロ接合で存在していて表現型は紫色の花ができていたのに、染色体乗換えで劣性遺伝子がホモ接合(優性の遺伝子が失われる)に組換わってしまって白い花になる場合とが考えられます。このような場合には、白い花をつけるのは1つの個体の特定の茎だけで起こることになります。こうした劣性形質になる遺伝子が体細胞分裂の過程でホモ接合になるような現象を体細胞組換え、あるいは体細胞変異と呼んでいます。
カキツバタは単子葉植物のため、茎頂分裂組織は根元近くにあり、そこから新しい茎が出来てその茎が花を付ける茎であれば先端に花が咲きます。花を付ける茎の数はせいぜい2~3本程度なので、同一個体から紫色の花を付ける茎と白い花を付ける茎とが共存する例を確かめられるかどうかは分かりません。しかしもし白い花と紫色の花が同一個体で存在していれば、体細胞組換えが起きた可能性が高いと言えます。

 鈴木 孝仁(奈良女子大学)

JSPPサイエンスアドバイザー
 柴岡 弘郎
回答日:2015-05-10
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