一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ムラサキハナナ

質問者:   中学生   北条時宗
登録番号3471   登録日:2016-05-01
ムラサキハナナの萼、花弁、雄蕊、子房 について調べなければなりません。でも、図書館で借りた20冊以上の図鑑などには、1冊も詳しく書かれていません。なるべく詳しく教えてくださると助かります。よろしくお願いします。
北条時宗さん

ご質問、どうもありがとうございます。アブラナ科植物の研究をご専門とされている東北大学の渡辺正夫先生にご回答いただきました。

【渡辺先生からのご回答】
北条時宗 さん:

 植物生理学会の質問コーナーにありがとうございました。アブラナ科植物の自家不和合性の研究をしていますが、形態学はあまり詳しくありません。ということで、アブラナ科植物の花について、一般的なことを記しておきます。

 ムラサキハナナは、別名、オオアラセイトウ、ショカツサイとも言われ、学名をOrychophragmus violaceusという、アブラナ科に分類される花です。花弁の色は紫色から薄紫色をしているようです。こちらもいろいろなものを調べただけなので、実物を見たことがないものですから。あと、ムラサキハナナは、これまでの実験で、アブラナ科植物のセイヨウナタネ(Brassica napus)と雑種を作ることができるという報告がありますので(Zhao et al. (2008) Plant Cell Rep. 27: 1611-1621.)、以降の説明は、基本、ナタネ、キャベツ、ハクサイなどのBrassica属植物を例にして、説明します。なお、この説明をわかりやすくするために、いくつかの写真をつけておきますが、これらの写真は、研究室スタッフの増子さんによるものです。
(写真)https://jspp.org/media/images/hiroba/essay/B_napus.jpg
このように細かな写真を撮ることは、あまり多くないかもしれないですが、アブラナ科植物の花の研究をしているので、渡辺の研究室のHPからもアブラナ科の花の写真を見ることはできます。参考にして下さい(http://www.ige.tohoku.ac.jp/prg/watanabe/)。

 植物は基本、花の形態で分類します。そのため、アブラナ科植物の花の形態は、ほぼ相似形といってよいかと思います。外側から、蕚片、花弁、雄ずい、雌ずいの順番で、それぞれ、4枚, 4枚, 6本, 1本あります。アブラナ科を今は、Brassicaceaeと言いますが、以前はCruciferaeと呼んでおり、十字花科とも言われ、蕚片、花弁は、90oずつずれて、4枚が配置されています。また、蕚片と花弁は45oずれており、上(下)から見ると、そのずれ方がよくわかると思います。蕚片、花弁とも花柄の基部で結合しているので、蕚片の先端付近で、花弁は開花とともに外に、ほぼ90o、曲がっています。雄ずいは、長い雄ずいが4本とその雄ずいと90oの位置に、短い雄ずいが2本配置されています。中央に、雄ずいがあります。花の色が紫色に近いこともあり、ハナダイコン(Hesperis matronalis)と間違えられることもあります。種子が形成される心皮は、2つであり、その中に多くの種子が形成されます。

 多くのアブラナ科植物の種子は、雌ずいの2心皮の中に形成されますが、ダイコンのような例外もあります。ダイコンでは、2つの心皮を結合した花柱に相当する部分(ビークと呼ぶようです)に種子が形成されることから、ムラサキハナナを始めとする多くのアブラナ科植物のようにはじけることはありません。

 上述のように、アブラナ科植物の花の形態は、種によってもちろん、少しずつ異なりますが、基本的には変わりません。自宅、学校などの周辺で、黄色の菜の花、あるいは、畑に咲いている、キャベツ、ハクサイ、ダイコンなどの花の形態を観察してみてはいかがでしょうか。もちろん、それ以外にも数多くのアブラナ科植物はあります。ちょうど、春の開花シーズンです。是非、ご自分で、実験してみられてはいかがでしょうか。

 渡辺 正夫(東北大学大学院生命科学研究科)
JSPP広報委員長
出村 拓
回答日:2016-05-23
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