一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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Eクラス遺伝子の発現について

質問者:   公務員   ミジンコさん
登録番号3475   登録日:2016-05-15
 島根県の高校の生物科教員です。いつも「みんなの広場」を利用させていただき、大変勉強になっています。
 
 高校生物の教科書に記載されているABCモデルについては、とてもわかりやすい仕組みなのですが、Eクラス遺伝子について質問させてください。教科書や図説によってはコラムとしてEクラス遺伝子について説明してあるのものもあって、このEクラス遺伝子は茎頂分裂組織を花器官へと分化させるもので、花器官の形成には必要なのだというような説明が書かれています。この茎頂分裂組織の花芽への分化については、「フィトクロムfr型による光周性」と「フロリゲンの作用によって花芽形成が始まる」と高校生物では扱っていますが、Eクラス遺伝子がこの花芽形成にどのようにかかわっているのか、どの段階でEクラス遺伝子が発現されるのか…この辺りをできるだけすっきりと体系立てて理解したいと思い、この点についてお教え頂きたいのです。
 テキストによっては、Eクラス遺伝子とFT遺伝子が同等のような表現で表してるものもあります。Eクラス遺伝子はとても興味深ので、正しく理解したいと思っています。「テイツ/ザイガー植物生理学」や「植物生理学」(ベーシックマスター)等を調べてみましたがEクラスにはほとんど触れられていませんでした。参考になる文献等についてもできればお教え下さい。どうぞよろしくお願いいたします。

追記、「高校生物解説書 授業でそのまま使えるPowerPoint付き! 植物編」ずっと「こんなテキストが欲しい」と思っていました。とても勉強になります。
ミジンコさん様

ご質問ありがとうございます。花の発生に関する研究をご専門とされている奈良先端科学技術大学院大学の伊藤寿朗先生に回答をお願いしました。

【伊藤先生のご回答】
Eクラス遺伝子はABC遺伝子と同じような構造をもつ転写因子として機能します。
ABCモデルは、3つのクラスの転写因子の組み合わせにより、4つの花器官、がく、花びら、雄しべ、雌しべが決定されるという遺伝学的モデルです(ここは教科者に載っていますね)。

Eクラス遺伝子はABCクラスの転写因子と複合体を作って機能します。すなわち、ABCモデルは、AとE遺伝子はがくを、AとBとE遺伝子は花びらを、BとCとE遺伝子はおしべを、CとE遺伝子はめしべを作るために必要であるというABCEモデルへとリニューアルされています。

Eクラスの変異体では花器官が葉にかわってしまいます。一方、ABC遺伝子とE遺伝子を強制的に発現させることによって、葉を花器官に変えることができます。この結果から、葉から花をつくるための必要十分条件が明らかになったと考えられ、Eクラス遺伝子は花器官の性質を与えるための因子と考えられています。

Eクラス遺伝子は、花芽形成において、ABC遺伝子と一緒にはたらくだけではなく、ABC遺伝子よりも少し早く発現が始まり、ABC遺伝子を誘導する機能もあります。

 伊藤 寿朗(奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科)
JSPP広報委員長
出村 拓
回答日:2017-02-16
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