一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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百合の葯の色

質問者:   一般   MAYUMI
登録番号3496   登録日:2016-06-01
百合の葯の色に黄色や赤茶色が、あるのは、何故でしょうか?
MAYUMI さん

このコーナーをご利用下さりありがとうございます。 ご質問には北海道大学の山岸真澄先生がお答え下さいましたので、ご参考になさって下さい。

【山岸先生からのご回答】

黄色い葯にたまっている色素はキサントフィル類と呼ばれるカロテノイドです。これに加えてアントシアニンがたまると、赤茶色になります。アントシアニン自体はピンク色ですが、黄色と混ざることによって黒っぽく見えます(絵の具をどんどん混ぜると黒に近づくのと同じ理由です)。また人の目には見えないフラボノールも葯にたまっています。

これらの色素は光を吸収します(中でもフラボノールは有害な紫外線をよく吸収します)ので、光から花粉を守る防御機構として働いていると考えられます。また、ユリの花にはたくさんのハチやアブが訪れて花粉を集めていきます(その一部が柱頭について受粉に役立っています)が、虫をおびき寄せるのにもこれらの色素は役立っていると思われます。葯の色によって集まる虫に違いがあるかは、ちょっとわかりません。

日本はたくさんの原種のユリが自生するユリの王国ですが、原種のユリの多くは赤茶色の葯を持っています(クルマユリ、ヤマユリ、サクユリ、ササユリ、カノコユリ、ウケユリ、オニユリ、コオニユリ、ヒメユリ、エゾスカシユリなど)。一方で沖縄・奄美に自生するテッポウユリと鹿児島県のトカラ列島に自生するタモトユリは白い花弁に黄色の葯を、新潟から東北南部に自生するオトメユリはピンクの花弁に黄色い葯をつけます。ユリの園芸品種の多くはこれらの原種のユリの種間雑種に由来していますが、葯の色も使われた原種のユリの色を反映しているようです。

 山岸 真澄(北海道大学大学院農学研究院)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2016-06-12
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