一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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植物細胞の更新

質問者:   一般   ドリー
登録番号3500   登録日:2016-06-05
動物の場合は、細胞は数ヵ月?で新しい細胞に入替わっていると聞きましたが、植物でも同じことが起こっているのでしょうか。もしそうなら、古い細胞の廃棄物はどの様に処理されているのですか。植物は排出器官を持っていないと思いますが。
ドリー さん:

みんなの広場のご利用ありがとうございます。
植物と動物とでは体作り(形態形成)の仕組みに大きな違いがあります。
植物には基本的に軸性という性質があって軸の両先端に分裂組織があります。茎の先端分裂組織と根の先端分裂組織です。新しい細胞はこれら分裂組織で作られ古い細胞の上へ積み上げられていきます。そのため先端分裂組織は常に先端にあり、軸の両端に近づくほど細胞は新しいものとなります。葉ができるとき先端分裂組織では主軸の分裂組織から葉の原基が枝のようにできますが、葉がある程度できあがると主軸と葉との分かれ目に、新たな分裂組織ができ、後にこれが生長すれば枝となります。植物の体作りはこの作業の繰り返しですので、古い細胞は死んでもそのまま元の位置に残ります。古い死んだ細胞の多くは新しい細胞と入れ替わるのではなくいろいろな重要な働きをしています。導管はその一例です。導管は生きていた導管要素細胞が死ぬと隣り合った導管細胞の隔壁が破壊され側壁の細胞壁だけが残るので管となって通導組織になります。大きな樹木などでは幹の中央木部はほとんど古い導管で通洞組織としての役割はなく、細胞壁にリグニンが沈着しているので物理的強度を保持しています。また、外樹皮の一部のコルク層細胞も死んだ細胞ですが、そのまま残って外部からの水、病原菌などの侵入を防ぐ防壁となっています。通常、死んだ細胞の処理は落葉、落花、落果や、樹皮の剝離などとして見られます。細胞の更新と言うよりも器官の更新によっていると言えます。特殊な例は、病原菌に感染したとき、菌の侵入を受けた細胞が積極的に死にますが、死んだ細胞群の部分は病斑となり、やがては無害な微生物などによって処理されてしまいます。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2016-06-10
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