一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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アントシアニンの青色呈色の退色について

質問者:   教員   修一
登録番号3514   登録日:2016-06-26
お世話になります。
赤色のつつじ花弁から1%塩酸で抽出したアントシアニンをpH8弱の塩基性下で青色に発色させましたが、短時間で退色します。青色を保持する方法をいろいろ工夫していますが、理論的な部分で不明のことが多く行き詰っています。アンヒドロ塩基アニオン型のアントシアニンの酸化が原因ではないかと考えていますが、酸化分解の仕組みや部位、水和と酸化の関係についてご教示お願い致します。
修一 様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。

回答をアントシアニン研究の専門家である名古屋大学大学院情報科学研究科 吉田久美先生にお願いしました。以下のとおりです。

なお、回答中にも書いてありますように、本コーナーではこれまでに多数のアントシアニンに関連する質問を受け付けております。「アントシアニン」という語句で検索してください。さらに多くの情報が得られると思います。

【吉田先生のご回答】

ツツジの花弁色素は、シアニジン、デルフィニジン、マルビジンなどのアントシアニジン発色団にせいぜい1つのグルコースかアラビノースなどの糖が結合しただけの、比較的単純なアントシアニンです。
従って、pH8では、容易に水和してプソイド延期になりますし、その後、環が開いてシスカルコン、さらにはトランスカルコンへと不可逆的に変化します。その上、ポリフェノール類はアルカリ性でより酸化が進みますから、複雑な酸化物になる可能性もあります。ただし、酸化と分解反応をきちんと調べた例はあまりないのではないかと思います。

このような単純な色素で青色を保とうと考えた場合、多量の助色素が共存するか、金属錯体にする必要があります。

ただし、pHは決してアルカリ性ではありませんで、弱酸性領域で青色が保たれます。
たとえば、アジサイの青色は、pH4程度で発現しています。

これまでに質問コーナーにたくさんのアントシアニンや花の色に関する問いが寄せられております。
色とpH、さらには、その現象における化学構造についてもいくつか解説されていますので、それらも参考にしてください。

 吉田 久美(名古屋大学大学院情報科学研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2016-06-30
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