一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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発芽の条件

質問者:   小学生   P
登録番号3563   登録日:2016-08-06
 発芽の実験をしています。食塩水、砂糖水、酢などで発芽しない理由は、0964や0365の回答を見て理解しました。
 今はどれくらいの濃さなら発芽し成長していくのか、食塩水や砂糖水をいろいろな濃さに薄めて実験しています。種子はハツカダイコンとミズナで調べています。
 その中で気づいたことがあります。それは、炭酸水や麦茶で発芽させた種子の成長がよいように思えることです。最初はたまたまかと思ったのですが、数回、実験をしても、ただの水よりもよく成長しています。
<ハツカダイコン
水…4日で3cmほど。炭酸水・麦茶…4日で4Cmほど>
       
 炭酸水や麦茶に成長をはやめる秘密があるのでしょうか。ご回答よろしくお願いします。
P さん

ご質問、ありがとうございます。

回答:
 麦茶や炭酸水は市販のものをつかわれたのだろうと思いますが、どこの会社のものでしょうか?発芽の実験はどのような条件(暗所?明所?など)で行なっているのでしょうか?また、それがわかっても、市販の製品のくわしい組成や性質はわかりませんから、はっきりした答えはなかなかだせません。以下の回答では、こんなことも原因かもしれないという可能性を考えたものです。
 まず麦茶ですが、キリンと伊藤園の麦茶に入っている成分を見てみました。どちらも、炭水化物、タンパク質、脂質はゼロという表示でした。麦茶を作るときに種子を焙煎していますから、高温でこわれてしまったのでしょう。キリンの製品には無機塩が入っていることが表示されていましたので、キリンのホームページでくわしい成分を調べてみましたら、ナトリウムのほかにリン酸、カリウムの塩も入っていることがわかりました。伊藤園のものでもほぼ同じものが表示されていました。リン酸、カリウムは肥料にもよくつかわれるように、植物の成長にひつような元素です。種子には芽生えの成長に必要な量は含まれていますので、水だけでも成長できますが、植物が成長した時に補充されれば、より成長が促進されるということが考えられます。それから、キリン、伊藤園の製品のどちらにもビタミンCが表示されていました。後から添加したものと思われます。種子が発芽しはじめると、体内でビタミンCがつくられ大事な働きをしていることがわかっています。外から与えたビタミンCは適当な濃度なら成長を促進すると発芽生理学の教科書に書かれていますので、ビタミンCが成長を促進している可能性もあります。しかし、製品に添加したビタミンCの量は書かれていませんので濃度が適当な濃度になっているかどうかは不明です。
 次に炭酸水の効果ですが、ネットで調べてみますと、園芸の分野でかなり広く試みられているようです。効果があらわれる原因の一つとして考えられているのは、光合成(光のエネルギーを使って炭酸ガス(二酸化炭素)を糖などの物質にする反応)の促進によるというものです。Pさんの実験が暗所で行われているならこの可能性はなくなりますね。
 炭酸水は炭酸ガスを高圧で水に溶かしこんでつくります。炭酸水は弱い酸性を示し、それを維持する働きがあります。その弱い酸性の状態が植物の成長に必要な鉄、ホウ素、モリブデン、リンなどの物質を吸収しやすくするというのが、炭酸水が成長を促進するということのもう一つの説明です。そこで、市販の炭酸水の成分表示を調べてみましたが、私が調べたどの炭酸水も無機塩はなしと表示されていました。ざんねんながら、この説明は使えないことになります(微量な成分は表示されませんから、完全に可能性を排除はできませんが)。Pさんの使われた炭酸水では成分表示はどうなっているでしょうか?
 もう一つの可能性は炭酸水が示す弱い酸性が根の成長に良いということです。ハツカダイコンの芽生えが成長するときには、双葉(子葉)と根の間の茎(胚軸)が伸びます。伸びる時には細胞が水を吸って大きく、長くなりますが、その水は根から吸収されます。根がよりよく成長することによって、成長が促進される可能性も考えられます。Pさんの実験ではどうでしょうか?
JSPPサイエンスアドバイザー
庄野 邦彦
回答日:2017-02-16
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