一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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葉が溶けて緑が濃くなったのは葉緑素が出たから?

質問者:   小学生   大町美詞
登録番号3581   登録日:2016-08-22
自由研究で「はつか大根」を育てています。発芽した後、空気のための穴をようじで開けたラップをかけて、背が伸びにくくしたものと、ラップをかけずに育てたものの成長の違いを調べようとしました。ラップをしたものの葉が濃い緑になり溶けてその後カラカラになってしまいました。濃い緑になったのは葉緑素が溶け出したからですか?溶けた葉が元気な葉について、その葉までがダメになってしまったのは葉緑素のせいですか?私はジブリ映画「もののけ姫」で見た、しし神が爆発してできたベトベトが、触ったものの命を奪っていくシーンを思い出し、葉緑素も光合成をする大切なものだけれど、直接触ると命を奪うものになるのではないかと考えました。
大町美詞さん:

みんなの広場のご利用ありがとうございます。

ラップをかけた葉には不思議なことが起きたようです。まず病害を疑って見ました。
しかし作物の病気(細菌、菌類あるいはウイルスによる)では感染部(葉、茎、根など)に黄(褐色)斑が発生し、それが時間の経過とともに黄色から褐色、黒色へと広がることが多く、緑色を保ちながら軟化する病状はほとんどありません。軟腐病という細菌病がありますが、この場合も感染部の葉は黄色から黒褐色になります。

そこでこんなことが起きたのではと想像してみました。ラップをかけるとラップに細かい穴があいていたとしても葉面からの水の蒸発(蒸散)は極端に妨げられます。光をあてながら蒸散がさまたげられると葉の温度が上昇しますが、ラップで覆った効果が加わってさらに葉面温度が上昇すると思います。すると葉の細胞は死にはじめ細胞による水の吸収、排出の調節が異常になります。一方、根から根圧による水の上昇はしばらく続きますので葉は水浸状態になります。この状態では葉緑素が分解していなければ「緑色が濃く」見えるか「葉が透明度を増して」緑色が鮮明に見えることになります。死んだ細胞群が水浸状態になると組織は柔らかくなります。この状態を美詞さんは「葉が濃い緑になり溶けた」と思われたのではないかと思います。葉緑素は油の性質が強いので水に溶け出すことはありません。

しかし、この推定には大きな欠陥があります。ふつう植物細胞が死に始めると葉緑素が変化して緑色が褪色し葉は黄色か褐色になります。買ってきてしばらくおいたダイコン、ホウレンソウやコマツナの葉が黄色になるのを美詞さんもご覧になったことがあると思います。「溶けた葉が元気な葉について、その葉までがダメになってしまったのは葉緑素のせいですか?」について。1株のハツカダイコンの葉に起こることはすべての葉に同時に起こることはありません。葉はそれぞれ若さ、元気さが違います。1つの葉が死んでいく状態はその株にとってとても具合の悪い条件(この場合はラップをかけた状態)ですから元気な葉もやがて同じように死んでいきます。すでに死んだ葉が元気な葉に接触したために元気な葉が死に始めると言うのではないと思います。

はっきりしたお答えができなくてごめんなさい。私にとっても「葉が濃い緑になり溶けてその後カラカラになってしまいました」とはすぐには理解できないことなのです。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2017-03-02
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