一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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葉脈と蒸散量の関係

質問者:   中学生   今野
登録番号3590   登録日:2016-08-31
平行脈と網状脈で、蒸散量の違いはあるのでしょうか?
学校の授業で、葉の裏表で蒸散量が違うのは分かりました。
ふと疑問に思い、レポートにまとめてみたいと思いました。
宜しければ回答お願い致します!
今野 さま

ご質問ありがとうございます。植物による水輸送を研究されている東京大学の種子田春彦先生に回答をお願いしました。

【種子田先生のご回答】
 網状脈と平行脈は見た目に大きな違いがありますが、蒸散速度には大きな違いはありません。高い蒸散速度を持つためにはそれに見合うだけの水が蒸散する場所に供給される必要がありますが、このためには葉が水を通しやすくなくてはいけません。網状脈の葉も平行脈の葉も透かすとより細い葉脈(細脈と呼びます)が見えます。葉の水の通しやすさは、この細脈までを含めた葉脈が、どのくらい密に走っているかによって決まります。同じような環境に生育している草本植物で比べたとき、網状脈も平行脈も細脈まで含めると同じくらい密に葉脈が走っているので、葉の水の通りやすさに違いがないことがわかります。

 葉脈では、水は道管と呼ばれる、内側が空洞の細胞がつながった管を通ります。したがって、葉脈はとても水を通しやすい性質を持っていて、はりめぐらされた葉脈によって葉の隅々にまで素早く水が移動します。細脈まで流れてきた水はそこで葉脈の道管から出ていき、葉肉細胞を通って、蒸散が起きる気孔の近くまで流れていきます。葉肉細胞を水が通るときには、細胞膜を通って細胞の内部を移動したり、細胞を囲む薄い細胞壁の部分を移動したりしますが、ここの部分は道管に比べて水がとても流れにくいことが知られています。このために、水が流れやすい葉では、葉脈が密に張り巡らされることで、葉肉細胞を水が移動する距離が短くなっています。

 種子田 春彦(東京大学大学院理学系研究科)
JSPP広報委員長
出村 拓
回答日:2017-03-16
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