一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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マツの葉の先端はなぜ鋭いのか

質問者:   一般   tummie
登録番号3621   登録日:2016-10-20
先日、白駒池(長野県)に行き、シラビソ、コメツガなどの針葉樹林を歩きました。その時に気づいたのは、これらの葉の先端が鋭くなく、丸っこいということです。指で突いても痛くないほど。針葉樹といえば、マツやヒマラヤスギみたいに先端が鋭いイメージがあったので、とても驚きました。では、マツやヒマラヤスギは何のために先端を鋭くしているのでしょうか? 外敵からマツボックリを守るため? でもマツボックリを狙う外敵いるの? とさまざまに想像しています。
Tummie 様

 ご質問、ありがとうございます。
 植物の生理生態学を専門とされている舘野正樹先生に回答をお願いいたしました。
 また、日本植物生理学会の「みんなのひろば」植物Q&A 登録番号1919も参考になるかと思います。

【舘野先生の回答】
 モミ属をみると、標高の低い場所に分布するモミは先端が二股に分かれ、尖っていますね。一方、標高の高い場所のシラビソは先端が丸く柔らかな感じです。尖っていることの適応的な意義についてはわかっていません。トウヒ属は標高にかかわらずすべてが尖っていますね。もしかすると適応には関係ないということになるのかもしれません。
 関連したことで最近わかってきたことがあります。標高の高い場所に分布する種は落葉樹も常緑樹も葉が相対的に薄く、柔らかであることが一般的であるということです。環境の厳しい所ほど剛直な葉が必要に思えますが、実際には逆でした。
 その意義については次のように考えることができます。寒冷地は光合成を行える期間が短いのが鍵です。厚い葉を作っていると光を広い面積から集めにくくなり、短い夏ではうまく成長できないようなのです。ブナが亜高山帯に分布できないのはブナの葉が厚すぎるためでした。
 一方、厚い葉は食害に強かったり、台風のような強風に強いというメリットがあります。低地ほど植食性の昆虫が多いので、厚い葉は温暖な場所で有効なようですね。

 舘野 正樹(東京大学大学院理学系研究科附属植物園日光分園)
JSPPサイエンスアドバイザー
庄野 邦彦
回答日:2017-03-01
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