一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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オオカナダモの光合成産物

質問者:   教員   きよし
登録番号3627   登録日:2016-11-01
中学校で理科を教えています。教科書に、オオカナダモの葉緑体をヨウ素液で染める実験が掲載されています。単子葉植物の光合成産物はデンプンではなく糖なので、ヨウ素反応は起こらないのではないでしょうか。
実際に実験をしてみるとほとんどヨウ素反応は見られません。インターネットで紹介されているものを見ると、いろいろコツがあるようで、しかも葉の一部分にヨウ素反応が見られる程度のようです。ここで見られるデンプンはどのように考えたらいいのでしょうか。
きよし さん:

みんなの広場のご利用ありがとうございます。
オオカナダモの葉は2層の細胞(葉脈部分以外)からなり緑葉細胞の顕微鏡観察によい材料となっています。ご質問の要旨は、実際にヨウ素染色をしたけれどもよく染まらなかった。染まった例もあるようだ。オオカナダモは単子葉類なのでデンプンはないはずだからどう考えたらよいのか、と言うことだと思います。まず、一般に言われるように「単子葉類は糖葉だから葉にデンプンはないはずだ」とするのは正確ではありません。光合成、糖、デンプンの関係を大ざっぱに見ると次のようなります。光合成では三炭糖リン酸(3PGA)の合成までが葉緑体内でおきます。カルビンサイクルを回すに必要な3PGA以外の大半は細胞質へ運ばれてショ糖となり他の器官、細胞へ転流されエネルギー源となりますが一部は葉緑体内にデンプンに変換され蓄えられます。
一部の植物群は3PGAをショ糖に変換して葉に蓄えますが葉緑体内でデンプンへの変換をするものもあります。ショ糖濃度を調整するために過剰の3PGAはデンプンに変換され葉緑体内に蓄えられます。このショ糖を葉に蓄える植物には単子葉類が多いというだけで双子葉類にも葉に糖を蓄えるものもありますし、単子葉だから葉には糖を蓄えデンプンは蓄えないというものではありません。これらの点について本Q&Aの登録番号2258, 2478, 2850をご覧になってください。

「実際に実験をしてみるとほとんどヨウ素反応は見られません」とありますが、どのような実験をされたのでしょうか。一般的には、まず、アルコールで葉緑素を溶かしだして脱色します(ヨウ素/デンプン反応色jを見やすくするため)。白色化した葉にヨウ素液を作用させて、顕微鏡で観察します。事前に十分光をあてた葉を用いれば葉緑体に相当する粒子が染色されているのがわかるはずです。タバコの葉などでは脱色した葉にヨウ素液を作用さると肉眼でも染色が認められますが、オオカナダモでは顕微鏡観察をしないとはっきりしないと思います。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2017-03-01
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