一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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トケイソウの花の非対称性について

質問者:   一般   なかむら
登録番号3630   登録日:2016-11-05
こんにちは。なんとなく植物が好きで、庭先に花などがあるとじっくり見てしまうのですが、トケイソウの花について以前から疑問に思っていたことがあります。
めしべの先端が3方向に分かれていますが、それらのなす角度が等しく120度ずつではなく、「90-135-135度」あるいは「60-150-150度」などと、一箇所だけ狭い部分のある非対称な形態になっている点が不思議です。また、めしべは3本なのにおしべは5本(3の倍数でない)という点も不自然な感じがしてしまいます。
このような非対称性を生じさせる発生学的な仕組みや、他の植物での例について、得られている知見がありましたらご教示いただければ幸いです。
よろしくお願い申し上げます。
なかむら様
 みんなのひろばへのご質問有り難うございました。頂いたご質問の回答を京都大学の戸部 博先生にお願いし以下の様な回答を頂きました。回答を読み私も勉強しました。

【戸部 博先生のご回答】
多くの被子植物の花には花をつくっている萼片、花弁、雄しべ、雌しべ(心皮)の数に規則性がります。それを数性といいほとんどの場合、3数性、4数性、5数性で、たとえば単子葉植物は3数性で、アブラナ科は4数性、トケイソウが含まれるトケイソウ科は5数性というように植物の科によって、数性が決まっています。トケイソウの花は5数性で、萼片5枚、花弁5枚、雄しべ5本ですが、雌しべをつくる心皮は3枚、そのため、雌しべの先端が3本に分かれ、3本の花柱(柱頭)になっています(もともと5数性ですから柱頭が5本、4本の花も当然あります)。雄しべが5本なのに、雌しべをつくる心皮が3枚というように、心皮(柱頭)の数が減少することは、5数性の花に良く見られます。
トケイソウの花をみると、5枚の萼片と5枚のは花弁と5本の雄しべの配置は交互に重ならないように配置しています。もし5本の柱頭があれば、雄しべと重ならない位置にし、理論的には柱頭と柱頭の間には360度が5等分された72度の開きがあることになります。ところが実際は柱頭が5本から3本に減少しているために、3本の柱頭の位置に規則性が失われてしまいます。そのため、いろいろな角度の配置をもつ花が目に付くことになります。同時に、自家受粉を避けるために、5本の雄しべに3本の柱頭が重ならないように配置することにも、不規則性の原因があるかも知れません。
なお「心皮」は、雌しべをつくる基本単位で、1枚、2枚、3枚、などの心皮が雌しべをつくっています。例えば、ミカンをたべるときに皮をむくと、中に10個の袋があります。ミカン科は5数性で、5心皮の2倍、つまり10心皮が雌しべをつくっています。

 戸部 博(京都大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2017-03-02
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