一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

チェックリストに保存

単子葉植物の小胞子の形成過程

質問者:   教員   ポピー
登録番号3641   登録日:2016-11-22
 多くの植物について減数分裂の観察をしています。そこで
疑問に思ったことがありますので質問させてください。
 単子葉植物の小胞子の形成過程は、第一分裂終了後、細胞質の分裂がおこり、第二分裂へと進みます。双子葉植物のように、第二分裂終了後、細胞質の分裂がおきることはありません。なぜでしょうか。単子葉植物の生育環境によるものでしょうか。知りたいと思います。よろしくお願いします。
ポピーさま

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。ご指摘のように花粉母細胞から花粉形成までの減数分裂の過程における細胞質分裂の様式には二通りあります。一つは細胞板(cell plate)形成が染色体の分離と共役しないで、細胞質分裂は二つの減数分裂(meiosis)が終わった段階でおきます(1)。この様式の分裂による花粉形成では花粉4分子の形態は幾つかのタイプ示し、双子葉植物に特徴的です。もう一つの様式は第一減数分裂直後に細胞質分裂が起きるもので(2)、一般に単子葉に見られるものです。花粉4分子の形態は大体正方晶(tetragonal)です。細胞板の形成の仕方は二つの様式でそれぞれ異なっています。双子葉タイプの場合には体細胞分裂における細胞板形成とは全く異なって、細胞板は細胞の細胞膜から発して求心的に軽されていきます。 これに対して単子葉タイプでは体細胞分裂の場合と似ていて、細胞板は分離した二組の染色体セットの中間にできるフラグモプラスト(phragmoplast)から周辺お細胞膜に向かって遠心的の形成されていくます。最近の研究によると花粉形成の細胞過程はかなり複雑です。Toghranegen らの報告によると(2013)、8科30種の単子葉植物について調べたところ、5種の異なった花粉形成様式があるということです。その中で、Aloe jucunda, Haworthia cooperi, Gasteria pillansiii, Asphodetine lutea, Kniphofia rufa, Hemerocallis fulva (ワスレグサ:キスゲの仲間間)は特に異なっており、初めの5種は双子葉タイプを示し、最後のは中間型だということです。もっともH. fulvaを除いてはいずれも多肉植物です。
以上のことから考えると、単子葉が(2)の様式をとるのは生育環境が関係しているわけではないでしょう。明らかに系統的なものがあるとと思います。(1)と(2)とでは細胞板の形成様式に明らかに違いがありますので、現在分子レベルでの研究が進められています。
なお、専門的にさらに詳しく知りたい場合には以下の論文を参考にしてください。いずれもweb site 閲覧できます。

Z.Toghranegar, S.Nadot, B.Albert Varition of microsporogenesis in monocots procucing monosulcate pollen grains. Annais Botany (2013) 112:135 - 139
(https://doi.org/10.1093/aob/mct104 <https://doi.org/10.1093/aob/mct104>)

Nico De Storme, Danny Geelen Cytokinesis in plant meiosis. Plant Signaling & Behaivior (2013) 8
(https://doi.org/10.4161/psb.23394 <https://doi.org/10.4161/psb.23394>)
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2017-02-17
植物 Q&A 検索
Facebook注目度ランキング
チェックリスト
前に見たQ&A
入会案内