一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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花粉四分子のプロトプラストについて

質問者:   高校生   みかん
登録番号3655   登録日:2016-12-09
花粉四分子について質問です。

カンキツ類の花粉四分子からプロトプラストを作れるか興味がわき、インターネットを使って調べているのですが、花粉四分子からプロトプラストが作れたという情報は、ユリ科を除いて見つかりません。この情報によればユリの花粉四分子や花粉母細胞では、カロースと言う物質をザモリアーゼを使って溶解すればプロトプラストが得られるとありますが、カンキツの花粉四分子でも同様な作業でプロトプラストが得られるでしょうか。教えてください。
みかん さん:

むずかしいご質問でしたのでお願いした先生(名古屋大学 石黒澄衞先生)がいろいろお調べになったため少しばかりお返事が遅れました。石黒先生から次のような回答を頂きました。
プロトプラストを作成するのは材料毎に最適条件を探す必要があります。原理は回答のようですが、出発材料採取の最適時期や遊離されたプロトプラストの安定条件などは個々に探して見つける必要があると思います。いろいろ実験して探ってみてください。成功を願っています。

【石黒先生の回答】
みかんさん
カンキツの花粉で実験したことがないので一般論でお答えします。おそらくたいていの植物の花粉四分子から、ユリの場合と同じ処理でプロトプラストが得られると思います。一般に被子植物の花粉四分子では、減数分裂で作られた4個の未熟花粉がカロース壁と呼ばれる主にカロース(グルコースがβ-1,3結合で重合した多糖)でできた厚い細胞壁の中に埋め込まれています。ザイモリエースのようなβ-1,3-グルカナーゼを主成分とする酵素で処理するとカロース壁が分解され、未熟花粉がバラバラになって酵素液中に出てきます。この未熟花粉の表面にはまだペクチンやヘミセルロースなどの多糖の層が薄く残っていますが、顕微鏡で見えるような厚さの細胞壁はなく、プロトプラストと呼んで差し支えないものだと思います。

注意点としては、花粉四分子の後期になると花粉がエキシンという難分解性の細胞壁(花粉壁)を作り始め、これは酵素処理では除けません。したがって、それよりも前の、減数分裂の直後(初期)から中期までの花粉四分子を材料に用いる必要があります。また、花粉四分子のカロース壁の外側には薄いセルロースなどの層が、カロース壁と花粉の細胞膜の間には前述のペクチンやヘミセルロースの層がありますので、植物によってはβ-1,3-グルカナーゼに少量のセルラーゼやペクチナーゼなどを添加するとより効率的にプロトプラストが得られるかもしれません。

 石黒 澄衞(名古屋大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2017-03-06
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