一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

チェックリストに保存

シロイヌナズナは陽生植物?陰生植物?

質問者:   一般   花の好きなクマ
登録番号3693   登録日:2017-02-23
 植物を育てるのが好きで、植物を育てる際は陽生植物なのか陰生植物なのかで植物を育てる場所を決めているのですが、たまたま入手したシロイヌナズナは陰生植物なのでしょうか?それとも陽生植物なのでしょうか?
 陽生植物といわれているアサガオやヒマワリが育つような露地の強光下だとシロイヌナズナは葉焼けし、比較的光が弱めな陰生植物といわれているポトスやシダ類が育つ室内でよく育つので、陰生植物なのかなとも思ったのですが、光が全くないと育ちません。シダ類は光がほとんどないところでも生きています。それでどちらに分類されているものなのかと思いメールさせていただきました。
花の好きなクマ 様

植物の生態学を研究されている寺島一郎先生(東京大学)に答えていただきました。

【寺島先生の回答】
 シロイヌナズナは日本原産ではなく帰化植物です。原産地でも日本でも、春から初夏に花が咲き種子をつくります。秋発芽して地面に葉をひろげたロゼットとして越冬し、春、日が長くなると抽薹(ちゅうだい、花茎が伸びること)し、花が咲きます。こういう生活史の植物を越年草とよびます。越冬は明るい裸地ですることが多いようです。裸地では遮るものがありませんから、受ける日射量は気象庁のデータとほぼ同じだと言えます。気象庁の日射のデータhttp://www.jma.go.jp/jma/menu/menureport.html などをご覧ください。瞬間的な日射量の単位は、W/m2です。ここではこれを積算した日日射量を参考にするとよいと思います。冬とはいえ真夏の半分ぐらいの日射量を受けていることがわかります。この意味では明るい場所を好む植物といえます。
 植物の光環境を比較する際には、光合成有効光量子束密度も使います。光合成有効光量子束密度とは、光合成に有効な赤色から青色までの光量子が、1m2あたり、1秒あたり、何mol降ってくるかというものです。例えば、真夏のよく晴れた日の太陽南中時の光合成有効光量子束密度は、0.002 mol /m2/秒 程度になります。うっそうとした照葉樹林や熱帯多雨林の林床では、その1%程度になりますが、そこにも植物は生えています。このような場所に生えている植物は確かに「陰生植物」です。植物が生育する光環境の光合成有効光量子束密度は、2~3桁異なることになります。このうち「陰生植物」と「陽生植物」をどこで区別するのかというと、実は、きちんとした定義はなく、相対的な意味で使われています。

【付記】
栽培に当たっては、寺島先生の回答の野外での生育状況(下記)を参考にしてください:
「シロイヌナズナは、春から初夏に花が咲き種子をつくります。秋発芽して地面に葉をひろげたロゼットとして越冬し、春、日が長くなると抽薹(ちゅうだい、花茎が伸びること)し、花が咲きます。」

 寺島 一郎(東京大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
櫻井 英博 
回答日:2017-03-06
植物 Q&A 検索
Facebook注目度ランキング
チェックリスト
前に見たQ&A
入会案内