一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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葉の有無による開花のしくみ

質問者:   教員   たかはし
登録番号3715   登録日:2017-03-25
なぜ葉が出るよりも先に花から咲くようなサクラの仲間がいるのか疑問があり、インターネットで検索してこちらの学会のサイトを知りました。この疑問点は他の方の質問と回答でわかったのですが、新たな疑問が生じましたので投稿しました。
その疑問は高校の生物では開花時にフロリゲンという植物ホルモンがあり、葉にあたる光(明期と暗期)が関係しているというものが開花のしくみの代表例として扱われています。春に開花する一般的なサクラの開花は、冬の寒さによる寒冷刺激や2月頃よりの温度によるということはわかるのですが、光、つまり冬至から春分に向かって日が長くなっていくことは関係があるのでしょうか?もし光も関係があるならば、葉がないので光の受容は葉ではなく樹皮などで、開花やその後の新芽が出るために必要なタンパク質もしくは植物ホルモンなどの変化があるのかというのが疑問点です。紹介が遅れましたが、中高で理科(生物)を教えている教員です。大学での専門は動物のため、植物の知識が不足していますので教えて頂きたいと思います。よろしくお願いします。
たかはし さま

ご質問ありがとうございます。フロリゲンに関する研究をご専門とされている横浜市立大学の辻寛之先生に回答をいただきました。

【辻先生のご回答】
ご質問ありがとうございます。この時期はまさに桜が満開で、花見を楽しまれることと思います。さてご質問にありますサクラの開花のタイミングが日長によって影響されるかという点についてですが、おそらく日長の効果は小さいだろうと考えられます。理由はいくつか考えられますが、例えば通常サクラは日の長くなりつつある春に開花する一方で、休眠が浅い場合は日の短い季節に狂い咲きするからです。つまり日長が長くても短くても開花しています。また、例えばコンビニエンスストア等の長時間明かりがついているようなところでサクラが早く開花しているかというと、そのような報告もありません(この点はデータをきちんと取ると面白そうです)。

サクラは初夏に花芽をつくり、秋に花芽が休眠し、冬の寒さで休眠が解除された後に、春の暖かさで花開きます(登録番号1104, 1819, 1170なども参照ください)。サクラの開花予測で、もっともよく使われる気象パラメータも積算温度なので、温度の影響がもっとも強くはたらくと言えます。

 辻 寛之(横浜市立大学木原生物学研究所)
JSPP広報委員長
出村 拓
回答日:2017-04-17
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