一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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葉の成長

質問者:   一般   MOMO
登録番号3728   登録日:2017-04-14
小さい葉っぱがその形を保ったまま
大きな葉っぱになってゆくのは、
葉のどの部分が成長して
面積を広げてゆくのでしょうか。

たとえば、

茎から出始めた小さな葉っぱの
   葉の先端、
   茎とつながっている葉の広がりはじめた箇所、
   葉の右端、
   葉の左端、
   葉の中心
5カ所に印をつけておいて
葉っぱが大きくなりきるまで待った場合
5カ所の印は成長した葉のどこに位置するのか?
という感じのことです。
       
          
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この疑問のきっかけとしては

買ってきたキャベツの断面を見ると
中心から出た葉が外側へ外側へと
移動しているように見えます。

でも外側ができた後に
中心部分から次々と葉を出されたら
外側にある葉としては
困ったことになるのでは??と思ったのです。

中心を包み込む外側の葉は
内側の成長にどう対応しているのか。

葉が何枚もあると複雑だから一枚の葉っぱで・・・と
あれこれ考えはじめたわけです。
MOMOさん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ご質問は葉の形成、成長をも深く研究されている東京大学の塚谷裕一先生が分りやすく解説してくださいました。

【塚谷先生の解説】
MOMOさん

 ご質問ありがとうございます。まず印をつけた場所がどうなるかですが、ふつうの植物の葉なら、もともとの5箇所の位置関係をほぼ保ちつつ、ただし基部の方ほど広がるように歪んだ形になっていくはずです。というのも、葉では基部側で細胞分裂をして,先端側では細胞伸長することが多いので、先端側では細胞伸長の分だけ面積拡大する一方、基部側では細胞分裂+細胞伸長の両方の面積拡大があるからです。

 ただし例外もあって、葉全体で広く細胞分裂する種類もあります、葉の先端で細胞分裂する事例もあります。

 さてこのご質問のそもそものきっかけのキャベツですが、これも葉は、やはり基部で細胞分裂し、そこから送り込まれた細胞が先端で伸長します。そしてご質問の通り、外の葉ほど古く、中の葉は後からその内部で成長してきた葉にあたります。そうしますとだんだん困ったことになってきて、窮屈になりますね。ですので、キャベツの玉の大きさというのは、皆さんが収穫して食べているくらいの大きさが限度であって、さらに成長させると破綻してしまい、爆発するように芯がほどけたり、全体に亀裂が入ったりしておじゃんになってしまいます。花が咲くときも大変で、葉の亀裂を縫って花茎が伸びたりします。これでは本当に仰るとおり困りますね。自然界ではこんな生き物は到底生き延びられません。

 キャベツが丸く丸まっているのは、奇形の突然変異をもっているからです。野生の時のキャベツの原種は、青汁に使うケール、あるいは花壇に植えるハボタンのような、普通に葉を開く姿をしていました。しかし昔、球状になる突然変異を人類が見いだし、選抜した結果、キャベツが生まれたわけです。キャベツも葉は次々と芯の方で作っていくわけですが、困ったことに外側の葉が反り返りもずれもしないので、葉の枚数が増えれば増えるほど中は窮屈になっていくということになります。それだからこそ、葉が軟白状態になって柔らかく育つわけですが・・・。

 なおキャベツがなぜ玉になるかは、色々な要因が考えられていますが、葉が外側に反り返らないこと、葉の基部が広く、また表面のワックスのせいで葉同士の摩擦がきつくてほどけず動きがとれないこと、などが大事な要件だとされています。長い歴史の結果とは言え、ずいぶん奇妙な生き物を私たちは食べているものです。

 塚谷 裕一(東京大学大学院理学系研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2017-04-24
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