一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ワラビの気孔は裏表どちらが多い?

質問者:   教員   キクチェンコ
登録番号3793   登録日:2017-06-18
葉の裏側の気孔数と表側の気孔数を比べると、葉の裏側に多いことが一般的である。ただし、ハスのような植物は、その限りではない……

これは、よく知られている事実かと思いますが、ワラビの場合はどうなのでしょうか?

ワラビの場合、葉の裏側に胞子のうが発達します。一時期のことですが、葉の裏側の面積の多くが胞子のうに占められ、葉の表側に気孔が多くないと、蒸散に差し支えるように感じられます。

ご教授いただけると幸いです。よろしくお願いします。
キクチェンコ さま

ご質問ありがとうございます。
植物の形態と発生をご専門とされている基礎生物学研究所の長谷部光泰先生に回答していただきました。

【長谷部先生のご回答】
キクチェンコさん、面白い点に気づかれましたね。大学生でもシダを全く知らない学生が増えていますので、中学生にぜひいろいろな植物があることを教えてあげてください。ワラビですが、胞子嚢群が葉の辺縁に形成されますので、葉の裏はほとんど胞子嚢で被われていません。また、イヌワラビやベニシダなどは葉の裏面に胞子嚢群がありますが、胞子嚢群のある部分は葉の一部分だけですので、陸生の被子植物同様、葉の裏側に気孔があると思い、通勤途中でこれらのシダを採って顕微鏡で見てみました。顕微鏡でそのまま見ても見えますし、透明マニキュアを使うとより見やすくなります(ネットで詳しい観察方法の解説が見つかります)。推定どおり、葉の裏にたくさんの気孔が見えました。ここで、ふと、ワラビのように葉の辺縁に胞子嚢群を形成するけれども、包膜が葉の裏側全体を被うようなシシガシラの気孔はどうなっているんだろうと思いました。シシガシラは通勤途中にありませんでしたので、別な用事のついでに採集してきました。これがご返事の遅くなった理由です。面白いことに、葉の裏全体が包膜で被われているのですが、葉の裏にしっかり気孔がたくさんありました。観察すると、胞子嚢の間は隙間だらけなので、気孔でのガス交換には十分なスペースがあるのかなと思いました。さらに、包膜で被われているので乾燥することも少なく、シシガシラが比較的乾燥したところにたくさん生えているのはこれが一つの理由かもしれないなあ、などと思いを巡らして得した気持ちになりました。日ごろ気にとめていなかったことを教えていただきますとともに、観察の機会をいただきましてありがとうございました。

 長谷部 光泰(基礎生物学研究所)
JSPP広報委員長
出村 拓
回答日:2017-07-22
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