一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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根からのイオンの吸収

質問者:   大学生   フィルー
登録番号3794   登録日:2017-06-18
 ファイトレメディエーションによる放射性物質の除去に興味があり、この疑問が浮かんできました。
 自分で調べていて、ファイトレメディエーションではカリウムのようにセシウムをイオンとして吸収する、とわかりました。またこの吸収にはとても多くの時間がかかるともわかりました。
 そこで私は、根からイオンを吸収するときにかかわる酵素(ATPアーゼ)や輸送体タンパク質(ポンプ)の働きを活性化してやれば短い時間で除去できるのではないかと考えました。そういった酵素やタンパク質を活性化するためにはどのような処理を植物にすればよいのでしょうか。つまり、根からのイオンの吸収を促進するためにはどうすればよいのでしょうか。
フィルーさん

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。ご質問は関連分野の専門家である岡山大学資源植物科学研究所植物ストレス学グループの馬 建鋒教授にお願いして、以下のような回答をいただきました。簡潔明瞭ですが、あなたは大学で学んでおられるとのことですので、さらに詳しいことはこの回答をもとに関連の参考文献を調べて勉強してください。

【馬先生のご回答】
植物のミネラルの輸送は輸送体(膜タンパク質)を介して行われます。セシウムはカリウムと化学的な性質が似ていることから、その吸収は主にカリウム輸送体を介して行われています。これはカリウム肥料を施与すれば、セシウムの吸収が抑えられることになります。しかし、自然界においてカリウムはセシウムより圧倒的に多いので、植物によるカリウムの吸収もセシウムよりずっと多い。輸送体によるイオンの吸収はプロトンポンプ(ATPアーゼの一種)などの力を借りて能動的に行われる場合があります。しかし、植物は体内のイオンのバランスを保つために、吸収する量を厳密にコントロールしています。生育に必要な量が足らないときには輸送体遺伝子の発現を多くして、吸収を促進します。逆に環境中のイオン濃度が多い場合、輸送体の働きが抑えられます。したがって、プロトンポンプをたくさん発現させれば、イオンの吸収が促進されるとは限りません。

 馬 建鋒(岡山大学資源植物科学研究所植物ストレス学グループ)
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2017-07-05
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