一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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CAM植物におけるCO2固定酵素の競合

質問者:   教員   ナム
登録番号3798   登録日:2017-06-21
C4植物では葉肉細胞で低CO2下でも活性があるPEPカルボキシラーゼが働き、CO2をC4化合物に一旦固定し、濃縮されたCO2を維管束鞘細胞でルビスコにより固定します。C4植物がわざわざ2種の細胞でこの様な反応を行うように進化したのには、PEPカルボキシラーゼとルビスコが1つの細胞内で共存していては、低CO2下でも働くことができるPEPカルボキシラーゼにCO2を独占されてしまうからだと理解していました。では、CAM植物では葉肉細胞で両酵素が働いているはずですが、ルビスコがうまく機能するのはどうしてなのでしょうか?PEPカルボキシラーゼが昼間は活性が抑えられるなどの機構が存在するのでしょうか?
ナム 様

ご質問をありがとうございます。

この質問にはC4光合成機能のイネへの導入などの研究にとり組まれている東北大学の宮尾(徳富)先生から下記のようなご回答をいただきました。ご参考になさって下さい。

【宮尾(徳富)先生のご回答】
植物のPEPカルボキシラーゼは、リン酸化による活性調節を受けます。PEPカルボキシラーゼ上の特定のセリン残基がリン酸化されると、低活性型から高活性型に変換します(PEPカルボキシラーゼに特異的なリン酸化酵素がこの反応を触媒します)。CAM植物では、PEPカルボキシラーゼは夜リン酸化され高活性化になり、昼は脱リン酸化され(リン酸基が除かれ)低活性型になります。このリン酸化は、概日時計によって厳密に制御されています。C4植物では、PEPカルボキシラーゼは昼リン酸化され高活性型になります(昼のリン酸化は、光と概日時計によって制御されています)。一方、ルビスコは、C4植物でもCAM植物でも(もちろんC3植物でも)、光が照射されないと活性化されません。つまり、PEPカルボキシラーゼによる初期CO2固定とルビスコによるCO2固定は、C4植物では葉肉細胞と維管束鞘細胞という2種類の細胞に空間的に分離されているのに対し、CAM植物では、夜と昼とで時間的に分離されているといえます。

 宮尾(徳富) 光恵(東北大学大学院農学研究科 植物細胞生化学分野)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2017-07-15
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