一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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バナナに含まれるカリウム

質問者:   一般   ぺこちゃん
登録番号3800   登録日:2017-06-23
子どもが学校でもらってきた給食のお便りに次のようなことが書かれていました。「バナナや根菜やアボカドなどカリウムをたくさん含む食品には塩化カリウムが含まれています」。
・食品分析の手法で塩化カリウムということまではわからないと思うのですが、植物として捉えれば、塩化カリウムが含まれるということなのでしょうか→これらの植物にカリウムはイオンとしてではなく、塩化カリウムとして含まれるのですか?
ぺこちゃん

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。植物の組織にはたくさんのカリウム(ポタシューム)が含まれています。ご質問に書かれているように私たちが食する野菜類などではアボカド、バナナの他にシロインゲン、ホウレンソウ、ジャガイモ、マッシュルームなどには特に沢山含まれています。動物性の食品でもヨーグルトやサケなどの魚にも多く含まれます。ご存知かと思いますが、植物にとって多量に必要な元素は炭素、酸素、水素は別として、窒素、リンとカリウムがあります。そのうち窒素とリンは生体を構成する分子の一部となって化合物の形で存在するため、細胞内で代謝系に入っていきます。しかし、カリウムは単独でイオンとして存在し、代謝系には入りません。そして植物体のほとんどすべての場所にかなりの量で存在します。カリウムはある種の酵素の働きを助ける補助因子となったり、植物体の水分バランスの調節にとって大切な気孔の開閉のメカニズムに、光合成のメカニズムに、植物体内の物質の輸送にと様々な大切な働きを持っています。カリウムは土壌から吸収されますが、その主な供給源は塩化カリ(KCl)、硫酸カリ(K2SO4)、 硝酸カリ(KNO3)であり、特に塩化カリの占める割合は多いでしょう。しかし、体内に吸収されるときはKイオンの形で入り、体内を移動します。そして体内ではやはりイオンの形で働きます。余分のカリウムイオン(+)は幾つかの有機酸(ーCOOHを持っているので、細胞内ではーイオンとなっています。)とイオン結合して有機酸のカリウム塩となります。実は野菜類に含まれるカリウムは有機酸の一つである、クエン酸と結合してクエン酸のカリウム塩となっています。したがって塩化カリという形ではありません。果実などの酸味のほとんどはクエン酸です。学校からの通信の記載は間違っているというか、極めて不正確な記述ではありますね。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2017-07-05
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